ドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分

最近、いわゆるドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分が立て続けに公表されました。
詳細は消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/index.html)の報道発表資料に掲載されています。
株式会社IB 平成22年7月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100709kouhyou.pdf
株式会社ウインド 平成22年4月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100409kouhyou.pdf
公表資料を一部抜粋します
「いわゆるドロップシッピングのサービスを提供する契約の締結について、相手方に受注メールの確認と入金の確認等簡単な仕事をするだけで確実に高収入が得られるかのように勧誘していました。
認定した違反行為は、不実告知、誇大広告、広告における表示義務違反及び交付書
面の不備記載です。」

昨年来、ドロップシッピングに関する苦情相談が消費者センターで急増しています。
私は、「アフィリエイト」という言葉はある程度認知されると思っていましたが、「ドロップシッピング」がこういう形で世間の目に出てくるとは思いませんでした。
しかしながら、このような被害が出てくるのは十分想定されるもので、定番の悪質商法モデルともいえます。

原点となっているのは10年ほど前でしょうか、
小さな商店などに「ムページを作ってお店を宣伝しませんか?」
という勧誘で、HP制作費・管理費・サーバー管理費用などを高額請求されるもので、初期費用のほかに毎月定額的な費用が発生する、
という商法です。

相談員として知っておくべきことは
①ドロップシッピングとは何か(アフィリエイトとの違い)
②ドロップシッピング自体は全然問題のないビジネスモデルである
③ドロップシッピングの業務提供誘引販売とは何か
④昔からの悪質商法モデルと同じである(商材がドロップシッピングになっただけ)

これらの①~④の知識が相互に理解できれば、相談対応のポイントはシンプルになります。

今後、ドロップシッピングについては、スキルアップ講座で詳しく解説したいと思います。

(平成22年7月16日 初稿)

企業不祥事と奇跡の信頼回復

梁瀬和男
2010年1月20日発行
同友館
1800円
ISBN978-4-496-04623-0

著者は家電メーカーの日立の出身で、大学教授などを経て、広告関係の審査にかかわっている。
この本では、企業不祥事が起きたときの原因やその後の対応についてメーカーに直接取材し、リアルに解説されている。
不祥事を起こした企業として取り上げラテいる企業は誰もが知っている大手メーカー8社。
それぞれを時系列的に解説されているので、不祥事が起こる原因など非常に勉強になります。

①エステー化学・・・冷蔵庫用の脱臭剤の使用期間について「優良誤認」表示
②ソフトバンクモバイル・・・「通話料0円」の新聞広告・テレビCM
③新生銀行・・・定期預金のリスクをチラシの裏に小さく表示
④日立製作所・・・環境によい商品の偽装表示
⑤三菱自動車・・・リコール隠し
⑥松下電器産業・・・石油温風暖房機の一酸化炭素中毒
⑦雪印乳業・・・低脂肪乳の食中毒
⑧不二家・・・期限切れの原料使用

人のうわさも・・・といいますが、覚えているでしょうか。
日本人はすぐに忘れてしまいますが、当時は大きな衝撃だったと思います。
消費者としては、しっかり心にとどめておく必要があります。
また、相談員としては大手メーカーとはいえ、腐った構図がどこにでもあるということを心の片隅に置きながらメーカーと応対してください。

一方、不祥事を解説するのとは別に、表示について分かりやすく解説されていますので参考になります。

特に印象に残ったポイント
①「お客様」と「消費者」とは違うというフレーズが何回も出てきます。企業にとって「お客様」とは自社製品などを購入利用してくれる人であり、「消費者」は自社商品を使わない人も含む事業者以外の人である。
②不当表示とは何か、について、景品表示法や食品衛生法など関連する8つの法律を一覧表にして解説している。
③不祥事はなぜ起こるか、4つの原因があり、何をすべきか解説している
※この部分の考え方は、相談業務にも十分当てはまるので是非参加にしてください。
(1)法的に問題はない → 社会通年、社会の常識で判断
(2)今まで問題なかったから、今回も大丈夫 → 「昨日」の常識は「今日」の「非常識」
(3)赤信号、皆で渡れば怖くない → 自ら考え、自ら判断し、自らの責任で行動する
(4)売上・利益至上主義 → 顧客満足度評価至上主義(営業ノルマ撤廃)

おすすめ度・・・表示に関する考え方が理論的に、体系的に、事例を通して、説明されているので、「勉強用に手元に置いてもOK」です。

企業不祥事と奇跡の信頼回復―消費者庁設置と消費者重視経営を目指して 価格:1,890円(税込)

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消費者情報 2010年7月号 (関西消費者協会)

今月号の特集は必読です。
「消費者法ファイル2010」として、消費者関連法の最新情報が解説されています。

①消費者法ファイル2010
列挙しますと
1.改正特商法・・・未公開株関連の解釈が後退している
2.追い出し屋規制法案・・・家賃に関する規制等
3.改正貸金業法・・・完全施行されたことから、借りられない人への対応が話題になっています
4.金融商品取引法の改正・・・金融ADR法などについて
5.商品先物取引法・・・従来の商品取引処方が改正され、一律許可制・不招請勧誘の禁止など
6.資金決済に関する法律・・・前払式証票規正法が廃止され、サーバー型電子マネーなども対象に
最新の法律の改正等については、知識として、しっかり知っておく必要があります。
現場での相談に活用する機会は少ないとは思いますが、何かあったらすぐに「気付き」を出せるようにして置いてください。

②国民生活センター新理事長のインタビュー
事業仕分けでのFAMIC・NITEとのテスト機能の統合についてのコメント
国民生活センターは「普通の消費者が使って安全かどうか」という視点でテストしているので、連携は必要だが、すぐに一緒にやれるものではない。
私が以前に事業仕分けの感想でもコメントしました。
確かにそのとおりだと思いますが、FAMICやNITEに比べて、国民生活センターは明らかにマンパワーが不足しています。
テスト機能においては、国民生活センターが本当にしなければならないことがあると思います。
何かということは、あえて言いませんが今のままだとダメですが、現場からの指摘にヒントは隠されていると思います。
また、相談窓口を高いレベルに持っていくためにレベルアップ研修を充実させ効率的に行うことが重要と述べています。
はっきりいって、本当のスキルアップにつながらない今の研修はいくらやっても効果はありません。
研修参加を希望して何度も受講していますが、スキルアップした気になっているだけです。
その理由は、私のブログで何度も書いております。
国民生活センターおよび全国の消費生活センターには、実効性のある研修をしてほしいと思います。

③現場からの情報(相談) ネットビジネスのマルチ商法
この手の相談は昔から形を変えて続いてますね。
要は、すべて同じパターンだという認識を持てば、対応はマニュアル化されます。
聞いたことのない商品が出てきてパニックになる相談員はスキルがありません。
すべて同じです。何度も書いてますが、そのために、新しい流行の知識は少しでもつけておく必要はあります。

③判例に学ぶ パチンコ攻略法詐欺について
パチンコ攻略法ほど、本当のパチンコの攻略法の歴史を知っている人と知らない人との間では認識が違います。
なぜ、簡単にだまされるのか?
私はよく理解できます。
それは、かつて本当の攻略法が存在し、プロに近い筋の一般人も攻略できていましたので。
現に私の大学時代の後輩が攻略法を使用していました。
そんな歴史を知っていれば、パチンコ攻略法のポイントは簡単に理解できます。
これについては、機会があれば解説したいと思います。

以上のように今月号はポイントが盛りだくさんでした。
ぜひ、購入して読まれるか、最寄の消費生活センターで読ませてもらうなどしてください。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2010年7月号