月刊 国民生活 2010年9月号

①特集 カードキャッシングの落とし穴
・クレジットカードの歴史、日米の違い、リボ払いなどについて解説されています。
・貸金業法改正の解説がありますが、完全施行されたので今年の消費者関連の大きな話題ですね。
・さらに、クレジットカード現金化の仕組みが解説されています。
・これらの特集を読むと、クレジットカードについての理解が深まると思います。

②消費者訴訟を学ぼう 消費者訴訟の現場から
「偶然性の立証責任はどちらに?」
・この記事はとても面白く勉強になりました。事件としては、海外出張中に自宅の駐車場から車が盗まれ、盗難保険を申請したところ、犯人と所有者が関与しているとして支払いを拒否したことです。
・「車が偶然盗まれた」という立証責任はどちらにあるのか、請求者であれば犯人を見つけるなどして犯行には関与していないことを立証しなければならないし、保健会社であれば請求者が誰かに車を盗むように指示したことを立証しなければならない。
・最高裁は、請求者以外の誰かが、その車を持ち出したという外形的な事実を主張立証すれば足りると判断しました。すなわち、防犯カメラによって誰かが盗んだということを立証すれば立証責任を果たしたことになる。
・他方、ビデオの誰かが請求者から犯行の指示を受けていたかどうかは保健会社が立証する責任を負う。
(詳しくは本誌を読んでください)

③暮らしの法律Q&A
「ペットが人にけがをさせたら?」
・相変わらず放し飼いの犬が多いです。子どもが多く遊んでいる公園でも平気で大型犬を離しています。私は許せません。こんなことをしている限り日本ではペットは社会に受け入れられないでしょうね。
・犬が人をかんだときの民法上の責任について解説しています。民事的な示談により飼い主は誠実に対応すべきです。こじれるとペットにとってもよくありません。
・たいていの自治体では、ペットが人をかんだら保健所に届け出る義務があります。また、その犬が狂犬病にかかっていないか検査する必要があります。実際には、民事的に円満解決すれば、それらの義務を果たさない人も多いでしょう。しかし、いったんこじれてしまうと、保健所からの指導が入ったりします。最悪の場合は、相手方から犬の処分を求められ、泣く泣く殺処分せざるを得ない結果になることもあります。ルールを守るのは当然ですが、それでも事故がおこるときもあります。愛犬のためにも事故があったときの対応を心得ておく必要があります。こんなな相談があったら、法律相談を紹介することになると思いますが、保健所への届出の必要性も説明してください。

④表示でみる商品ミニ知識
「観光土産品」
・「観光土産品の表示に関する公正競争規約」「食品衛生法」「加工食品品質表示基準」による表示が紹介されています。
・私がお土産を買うときに重視するのは、「固有記号」です。できるだけ地元でつくられたものを買いたいので、販売者+固有記号よりも製造者が地元表示になっているものを選びます。地元で作られたのが確実ですから。固有記号というのは、実際に製造していなかったり下請けに出していたりしても販売者で表示することができ、その代わりに役所に届け出ている実際の製造所を記号で表示する制度です。いい点も悪い点もありますが、せっかく買ったお土産が、全然遠い工場で作られていたりすることもあります。

⑤時点・論点
「変わる高専賃-求められる高齢者住宅の整備-」
・高専賃とは高齢者船よい賃貸住宅のことです。自宅で暮らすのは難しいが、施設にはなかなか入れない、という高齢者の受け皿となった有料老人ホームが規制により開設抑制が行われ、急成長してきたのが高専賃です。高齢者のみ入居でき、単なる賃貸住宅であるが、高齢者のニーズに合わせて、食事・掃除・洗濯などの生活支援サービスのほか、訪問介護やデイサービスなどの事業所が併設され、介護保険を使ったサービスを受けられる物件が増えてきているとのことである。
・問題や課題もいろいろありますが、今回、私がこの記事を取り上げたのは、「ガイアの夜明け」というテレビ東京の番組で7月13日に「シリーズ「ニッポンの家族の行方」第2弾 自由、安心に暮らしたい~“シニアの住まい”広がる選択肢~」で、高専賃が取り上げられ、今後の未来像として印象に残っていたからです。詳しくはHPを参照してください。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview100713.html

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月間 国民生活

解説 ドロップシッピング その3

①ドロップシッピングとは何か、アフィリエイトとはどう違うのか (その2)

「ドロップシッピングは儲かるのか」

アフィリエイトの報酬は1%程度のものが多く、たとえば10000円の商品をアフィリエイト経由で売り上げた場合は100円の報酬が入ることになります。
それに対して、ドロップシッピングでは販売価格を自由に設定することができますので、同じ商品を9000円で仕入れて利益を1000円上乗せして10000円で販売すると報酬は1000円となり、単純比較ではアフィリエイトの10倍の儲けが出ることになります。
この仕組みは、実店舗でも同じといえるでしょう。
アフィリエイトでもドロップシッピングでも実店舗でも、売上が増えれば増えるほど利益も増えるというのが基本原則です。

ところが、実際にはほとんどが儲かりません。
なぜでしょうか?

簡単な理由です。
売上が増えないのです。
(売上が全くないというのが多いかもしれません)
売上が増えないのであれば、「売上が増えれば増えるほど」という前提条件がなくなるので当然といえば当然です。
それは実店舗にもいえます。
実店舗では、広告をしたり、商品の品揃えを換えたり、価格を安くしたり、集客と売り上げ増のための企業努力をします。
その結果、経営が順調になり、「勝ち組」の方向へ進んでいくのです。

ドロップシッピングでもアフィリエイトでも同様です。
集客や売り上げ増加のための企業努力をすれば、利益も上がるのです。
しかし、ショップ開設のハードルが低い分、相応の努力が必要です。
そういう「努力」なしに成功するはずがありません。
これは、お金儲けのあらゆることの共通原則です。
当然ながら、ドロップシッピングやアフィリエイトで何百万・何千万の収益を上げるなど成功している人もいます。

私も別サイトでブログを管理し、アフィリエイトをやっているのですが、1ヶ月に10円も満たないことが多いです。
ただし、アフィリエイトは目的ではなくおまけでやっているので仕方がありませんが、1日に100人程度の訪問者もあり、工夫した結果、最近は数百円になることもあります。
もし、アフィリエイト目的に特化すれば、もっと報酬が上がるのではないかと実感はしています。
しかし、それに手間隙かける余裕はありませんので、おまけ程度です。
ただし、確かに、本気で取り組めば、そこそこできるかもしれないという実感はしております。

もうひとつ、儲からない原因としては、実は商品を仕入れる場合でも仕入れ値が本当に安いとは限らないのです。
メーカーから直接取引して購入するのではないので、中間マージンが発生します。
そうすると、仕入れた価格に自分で利益を上乗せした場合に、どう考えても、高い価格になってしまいます。
さらに、ネットではいろんなショップの価格比較が可能ですので、中間マージンがない業者の販売価格に太刀打ちできず、たとえ、検索されて購入ショップの候補に挙がったとしても選ばれることはないのです。
同じようにドロップシッピングしているショップと対抗する必要もあります。
極端な話、仕入先のベンダーが直接一般向けの販売もやっていたらどうなるでしょうか?

そこで、ショップとして経営努力のひとつとして、価格を引き下げます。
1000円の利益のところ100円の利益にします。
すると売上が上がるかもしれません。
しかし、これでは、アフィリエイトと同じぐらいの利益になってしまいます。
収入は同じなのに、売主としての責任がのしかかってきます。
割に合わないですね。
ドロップシッピングの最大のうまみは「自由に価格を設定できる」というはずなのに、現実には競争という名のもと、自由にはできなくなってしまうのです。

また、ほかに集客のための「経営努力」があり、ネットショップでは検索されたときに自分のショップが上位に表示される「SEO対策」があります。
「SEO対策」は②で説明しますが、自分で対策できればいいのですが、素人がやって上手くいくとは限らず、外注すると経費が発生します。その結果、ショップを見てもらう機会が増えるかもしれませんが、売上が増加するとは限りません。
また、同じような手段として「広告」をする方法もあります。
いわゆるバナー広告などです。
当然経費がかかります。
アフィリエイトより儲けたいと思いドロップシッピングをしたのに、儲けるために自分がアフィリエイト広告をお金を出してするというのは本末転倒でしょう。

とはいえ、ドロップシッピングが始まったころは、安売りせずとも十分に売上が出たのです。
しかし、数年経過し、誰もが同じことを考えた結果、さきほどの状況になってしまい、ドロップシッピングのうまみは少なくなってしまいました。

「ドロップシッピングは努力をすれば儲かる可能性がある」
というのを
「ドロップシッピングであれば簡単に誰でも儲かる」
として、ドロップシッピング商法が誕生したのです。
これについては③で解説したいと思います。

相談員として、まずアフィリエイトとドロップシッピングは全く違うものであるという知識を持っておけば、なぜ、これがドロップシッピング商法とう悪質商法を生み出されたのか理解することができると思います。
(アフィリエイトも情報商材で利用されることがあるのですが、それは情報商材で解説したいと思います)

(平成22年8月26日 初稿)

解説 ドロップシッピング その2

①ドロップシッピングとは何か、アフィリエイトとはどう違うのか (その1)

雑誌などでのドロップシッピング商法の解説には「ドロップシッピング」のことを正確に説明しようとするあまり、余計にわかりにくくなっているところがあります。
しかし、このアフィリエイトとドロップシッピングにおける天と地ほどの大きな違いをまず押さえておく必要があります。

復習になりますが、
アフィリエイトは何度も説明してきましたが、お店の商品のバナー広告などを自分(アフィリエイター)のHPに掲載し、それを見た人が、そのバナーをクリックすることで、その商品のショップに飛んで、そのお店で商品を購入することになります。
結果的には、購入者は商品を売っているショップから直接購入することになり、この商品購入契約にはアフィリエイターはなんら関係しませんし、購入者もそのバナー広告が単に商品やショップを紹介しているだけなのか、実はアフィリエイト広告だったのかは特に気にすることはありません。

ドロップシッピングは、
商品やお店を紹介するのではなくて、らショップを開設・運営し、自ら商品を販売することになります
すなわち、事業者になることになります。したがって、会社勤めの場合は就業規則違反になったりしますし、税務署に事業者として申告する必要もあります。
ショップを経営するので、相談員ならご存知の通信販売に当たり、また特定商取引法に基づく表示も必要になります。
また、当然ながら、購入者はあなたのショップから購入するのでクレーム対応も必要になります。
アフィリエイトでは単なる消費者(収入があるので厳密には違うかもしれませんが)だったのに、ドロップシッピングによって一気に「(個人)事業者」として起業してしまったことになります。

商品を仕入れたり郵送したりしていないのになぜ? と思うでしょうが、それを成立させているのがドロップシッピングの仕組みです。
在庫を持たなくてもショップが開けるというのが特徴です。

販売の仕組み
ショップはドロップシッピングを利用可能な卸売業者などのベンダーと提携し、ベンダーから商品を仕入れます(卸値だから安いとは言われてますが)。
ショップでは、その商品に自分の店での利益を上乗せし自由に価格を設定します。これが最大の魅力となります。
注文が入るとショップはベンダーから商品を仕入れて購入者に郵送しますが、この郵送作業もベンダーが代わりにやってくれます。
送り状はもちろんショップの名前で送られます。
また、注文を引き継ぐ仕組みもベンダーから提供されたりもします(ショッピングカートの仕組み、後述)。
したがって、ショップでは注文をとるだけで、あとはベンダーがやってくれるので、手軽にショップをもてるということです。
自分でする作業といえば、販売する商品を選び、自分で価格を設定することだけです。
あまりにも簡単すぎるので、自分自身がショップのオーナーで事業者である自覚が薄れるかもしれませんが、売主としての責任が発生するので、クレーム対応などが必要ですが、それらについては相談員であればよく知っていると思います。

これが一般的なドロップシッピングの仕組みですが、中には、ベンダーが販売責任をもったりクレームの対応をしたりする契約の形態もあります(そこまでしたらドロップシッピングの意味がなくなりそうですが)。
基本的には、ドロップシッピングは消費者がショップのオーナー(事業者)になる仕組みだと理解しておけばいいと思います。
(ドロップシッピングの仕組みについては、検索すれば詳しい解説サイトはたくさんありますので参照ください。なお、本講座での解説は相談員向けにアレンジしたものとなっております。)

さて、ショップを始めたあとはどうなるのでしょうか。
残念ながら、ショップを開設した当初の夢や希望は、まもなく消え去ってしまうことになります。
ほとんどのショップでは全く商品が売れないのです。
商品の売上がないショップは経営的にどうなるのかは予想がつくと思います。

補足ではありますが、ドロップシッピングは在庫を持たずにショップを解説することができ、商品や価格を自由に設定することが可能で、発送作業も代行してくれるという「ビジネスモデル」であり、この仕組み自体はすばらしいものだと思います。起業したい人にとっては魅力的です。そして、事業であるから、うまくいけば収益もあげることができます、失敗することもあるという自己責任の世界です。

もし、ドロップシッピングはあやしいものだ、と思うのであれば、それはバイアスです。
問題になっているのは、このビジネスモデルではなく、このドロップシッピングというビジネスモデルを一種の「商材」に仕立てあげて、それを悪用した古典的な悪質商法なのです(これについては③で解説します)。

次回は、この仕組みの続きで「ドロップシッピングは儲かるのか」ということについて解説したいと思います。

(平成22年8月23日 初稿)