月刊 国民生活 2011年9月号

①チェックチェック 苦情相談
「システム障害により生じた損失の補てんを拒むネット証券」
・システム障害による損失補てんの考え方が説明されています。
・金融商品取引法第39条によれば、証券会社が顧客の株取引による損失を補てんすることは原則として禁止されている。しかし、証券会社の注文間違い等で顧客が損失を被った場合、証券会社が監督官庁に届け出て「事故」である旨の確認を受けていれば、例外的に損失補てんが認められる。
・今回の相談は、業者がシステム障害による損失を「事故」と認めず返金に応じないためトラブルになっている。
・そうした事情であっても、国民生活センターや消費生活センターのあっせんにより相談者と和解した場合、業者は事故確認を受けていなくても顧客の損失を補てんすることができる(金融商品取引業等に関する内閣府令119条1項6号)→これは知りませんでした。センターでここまでの和解あっせんの力があるとは思いませんでした。逆に、ここまでの力を持っていることは手に余るかもしれません。

金融商品取引業等に関する内閣府令・・・http://law.e-gov.go.jp/announce/H19F10001000052.html

(事故の確認を要しない場合)
第百十九条  法第三十九条第三項ただし書に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
六  消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第十九条第一項又は第二十五条に規定するあっせんによる和解が成立している場合

②暮らしの判例
「海外ツアー中、観光地に置き去りにされたことにつき、慰謝料請求が認められた事例」
・添乗員同行の海外ツアーで添乗員が点呼を怠り、観光地で専用バスに乗れず置き去りにされたとして、旅行会社に慰謝料の請求が認められた。
・海外ツアーでは、実際にサービスを提供するのが旅行会社ではなく、現地のサービス会社であり、旅行会社が間接的にしか支配できない現実をふまえ、判例でも旅行会社の席にが制限されている。
・募集型企画旅行で旅行会社従業員の添乗員のミスであったことから、この制約を受けず旅行会社の責任が肯定されたことが影響。
・その観光位置では自由行動の時間はなかったにもかかわらず、列を離れ勝手にお土産を買い団体行動を順守しなかった点は過失相殺されている。

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月刊 国民生活

国民生活研究 2011年6月号

①【論文】保証人保護をめぐる諸問題 -追補 震災と保証債務について-
酒井 恵介(弁護士)

・保証について民法の説明かをまじえて丁寧に詳しく解説されています。
・真剣に熟読すれば、かなりの勉強になりますが、26ページものの論文なのでなかなか読めません。
・構成を抜き出しておきます
第2 「保証」とは
第3 「信用保証」をめぐる問題について
第4 「賃貸保証」をめぐる問題について
第5 「保証人ビジネス」をめぐる問題について
第7 追補 東日本大震災と保証債務について

②【論文】地方消費者行政強化に向けた課題について
野本 守利(群馬県会計局審査課長(前生活文化部消費生活課長))

・群馬県の消費者行政やの現状や相談員の待遇等についてリアルに解説されています。
・特に、相談員の身分等についての解説はぜひとも読んでおくべきですね。
・構成を抜き出しておきます
第2 群馬県の消費者行政強化の取り組み
第3 消費生活相談員の処遇問題
第4 国民生活センターの見直し問題-「国民生活センターの地方消費者行政への支援」
第5 財源問題-「地方消費者行政に対する国の支援の在り方」
この中で特に相談員に関することについて取り上げます

・相談員の任用の法律的な根拠について大別して3つのパターンで整理
①特別職非常勤職員(地公法第3条第3項第3号)
②一般職非常勤職員(地公法第17条)
③臨時的任用職員(地公法第22条第2項又は第5項)
群馬県は①に規定する嘱託員として任用。
1年以内の任用期間で更新という考えではなく、新たに任用する形での継続採用になっている(勤務条件の変更があっても、更新ではないので、新たな条件で納得して採用となる)。←この考え方は勉強になりました
・任用に際して、平等取扱の原則があり、公募し、能力の実証を経て任用すべきだが、相談業務を担える人材が不足しているので公募等をせずに任用してきた。平成21年度以降は基金活用により相談員要請講座を実施し人材が豊富になってきたことから公募等の手続きも検討。
・平成21年度から、相談員の能力や姿勢を評価する「相談員評価制度」を導入し、客観的な能力の実証を確保している。背景として、22年度から「主任消費生活相談員制度」を導入し評価が必要になった。
・雇止めについて国の通知等の解釈を元に解説
・外部委託の是非について
・常勤化への要求のうち専門職採用について
今後、消費生活専門相談員、消費生活アドバイザー及び消費生活コンサルタントの各々の資格が消費者庁等の下で統一され国家資格化し、しかも高等教育機関等で、「消費生活」関係のカリキュラムが必須となるなど、劇的な環境変化があって、初めて人事当局と実質的な協議が始められると考えている。
・報酬問題について、群馬県では現行の報酬体系では「天井」に達しており、更なる処遇改善するには嘱託職員全体の処遇改善が必要
・研修
非常に限られた人員体制の中で、研修を企画、立案する職員は他の業務の兼務をしながら実施するという限界から、研修内容が限定的になってしまう傾向がある。
消費者の相談内容が高度化・複雑化している中で、研修内容についても、法律知識だけでなく、あっせんの交渉のノウハウやスキルを身につけられるような実践的な研修が必要になっており、相談業務の処理に熟知した専門的な立場からの企画、立案が必要となっている。

※相談員の身分や待遇について思うところがありますので別途記事にしたいと思います。

国民生活研究 第51巻第1号(2011年6月)
年4回発行 定価620円(税込み)

消費者委員会資料(国センの研修について)

平成23年6月10日の第57回消費者委員会の議事録から、国センの研修についての各自治体の意見について紹介したいと思います。
この資料は自治体にも送付されているかと思いますが、すべての資料をネットで見ることができます。

消費者委員会
http://www.cao.go.jp/consumer/index.html
内閣府ホーム>審議会・懇談会等>消費者委員会>消費者委員会会議資料>2011年>第57回 消費者委員会
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2011/057/shiryou/index.html
【資料6】 消費者行政体制の一層の強化に向けた検討報告-「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」中間整理を踏まえて-
(資料6-3) 国民生活センターの在り方の見直しに係る調査結果(47都道府県・19政令指定都市)
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2011/057/doc/057_110610_shiryou6-3.pdf
6ページと7ページ
すべて抜き出したいところですが、セキュリティ制限されており、テキストをコピーできませんのでポイントを書きたいと思います。

5.研修について
(1)相談員・行政職員対象の研修は引き続き国センが主体となる必要がある
91%(60)は必要あり、6%(4)は必要なし、と回答
必要なしの理由・・・基礎的な知識の習得等の研修は民間団体等への委託も可能
(2)相談員対象の専門事例講座等の検収について自治体での実施は可能か
85%(56)は不可能又は困難、15%(10)は可能
不可能又は困難な理由・・・基礎的な研修は可能だが、専門講座のような高いレベルの研修は適任講師の選定・十分な事例収集が地方では困難
専門的な知見を有する人材は全国に多数存在する明けではないので地方での実施はコスト・人脈等の点で困難

要は、「知識習得のための基礎的な研修は実施可能だが、専門的な研修ができる人材がいないので国センに実施してほしい」というところでしょうか。ただし、国センでも本当に適任な講師や内容が十分に確保できているかといえば限界もあると思いますし、全国をフォローするのも難しいと思います。

これらは、まさしく、私が当初から指摘している問題点だと思います。
私もこれらの問題点を解決しようとアクションを起こすものの、それぞれの立場が違ったり、理想と現実のギャップがあったり、ハードルは高いですね。
需要と供給のマッチングが上手くいかないというところでしょうか。

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