消費者情報 2011年11月号 (関西消費者協会)

①特集 子どもと女性の貧困問題
特集1 拡大する貧困と生活保護の動向 貧困の連鎖から希望の連鎖へ
特集2 女は貧乏に生まれない 女を生きて貧乏になるのだ長く生きれば生きるほど
特集3 教育現場から見た「子どもの貧困」
特集4 母子家庭の仕事と暮らし 貧困と偏見のなかで
特集5 不平等社会と消費者問題
特集6 いま求められる社会的包摂の精神 震災復興と貧困の現場
特集7 「社会保障・税一体改革成案」で国民生活はどうなる?
特集8 社会保障制度関連年表窶披€鐀 50年のあゆみ
・貧困問題の中でも子どもと女性にターゲットを絞った特集です。切実な内容です。現実を良く知ることが出来ます。
※貧困問題は消費者問題の枠を超えて社会問題となっています。正直言ってコメントしにくいです。問題が単なる金銭的なものであるばかりでなく、離婚や虐待やDVなど人間性に関わってくるものが根底になっているからです。予算措置は切っても切れないものです。一方、それは税金から支出されるものです。今の借金まみれの日本でそう簡単に予算措置はかないません。増税が必要と分かっていても、社会全体は増税には消極的です。日本の国自体も貧困問題を抱えています。本気になって社会全体で弱者を支えるという機運が生まれればいいのですが、昭和40年ごろの高度成長期と違い、人間関係がぎすぎすしています。思いやりの心が失われています。そんな中で、相談員は行政に存在し、行政的なルートで救済する道を助言してあげることができます。消費者センターの管轄ではない場合もありますが、やっとつかんでくれたわらを切ることなく、少なくともパイプ役としての役割を果たすべきだと思います。
※私の学生時代の友人もDVで離婚しましたが、十分な慰謝料も養育費ももらえず、子どもも精神的な問題を抱え苦しんでいます。私の紹介で結婚したようなものなので責任を感じます。とにかく、弁護士に相談して、裁判をしてでも金銭的なけじめをつけるように助言しています。

②判例に学ぶ
「順位式方式」による預貯金債権の差押の申立を違法とした最高裁決定
最高裁平成23年9月20日判決
・最初に判決と強制執行の一般論について解説しています。
・裁判で勝訴し、相手方が賠償金を支払わない場合は強制執行ができます。しかし、悪質業者の資産の状況は分からず判決も無視します。被害者に勝訴判決が出たにもかかわらず被害回復ができない仕組みになってしまっています。
・被害金を銀行から差し押さえるために「順位式方式」というのがあり、下級裁判例では認められてきたのに、今回の最高裁判決で違法とされました。被害者救済や法秩序維持の視点は全くないと批判しています。
※「順位式方式」というのを始めて聞きました。悪質業者は徹底的に厳罰に下すべきだと思います。しかし、現実と理想にギャップがあり、地団駄を踏むばかりです。

最高裁HPの判例
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110926100210.pdf

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年11月号

ネット取引の広告表示のガイドライン(平成23年10月28日公表)

10月28日に消費者庁から、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」が公表されました。
3ページの概要版と11ページの詳細版の2つが公表されています。
なお、今回のガイドラインは「景品表示法上」に限定されていることに注意してください。

消費者庁HP
表示対策課<その他の景品表示法関連の公表資料>
http://www.caa.go.jp/representation/index.html#m01-5
平成23年10月28日 「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について[PDF:772KB]
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/111028premiums_1.pdf
(今は消費者庁のトップページの新着情報に掲載されていますが、表示対策課のページでは下の方にあります)

ネットに関してはさまざまな通知が出ていますが、今までにはない具体的なモデルが例示されているので、なかなか面白く、最新トレンドを踏まえた内容のガイドラインです。
ぜひ、というよりも必ず読んでおいてください。

今回、5つのモデルについて解説されています。
①フリーミアム
②口コミサイト
③フラッシュマーケティング
④アフィリエイトプログラム
⑤ドロップシッピング

さて、このガイドラインを読んだ場合の相談員の感想をレベル分けしてみました

初級レベル・・・知らなかったから勉強になった
知らなかったではダメです。勉強不足です。
どれも現実に相談業務の中で問題になっていますし、相談を受けたこともあるかもしれません。
何よりも、ある程度のアンテナを張っていれば普通に知っていることばかりです。
相談員であれば、知っておくべきモデルです。
これをきっかけに、きちんと理解しておいてください。

中級レベル・・・今までの景品表示法を運用すれば「当たり前」の内容だ
そのとおりです。
詳細版の1ページ目に

なお、今回提示する問題点及び留意事項は、景品表示法のこれまでの運用及び電子商取引ガイドラインの考え方を新たなサービス類型に対して当てはめて記述したものであり、電子商取引ガイドラインの考え方を変更するものではなく、電子商取引ガイドラインは引き続きインターネット消費者取引の基本指針となる。

とあります。
対象が新しいサービスになっただけであり、景品表示法上の解釈は同じです。
応用力は現場でも大切なスキルです。
できれば、これぐらいの感想を持ってほしいのですが、対象が変わっただけでパニックになってしまう相談員もいるかもしれませんね。

上級レベル・・・当たり前の内容だけど、違和感を感じる
具体的なメーカー名や商品名が掲載されていないのは文書の性質上仕方がないことですが、表示の特定の項目(景品表示法上の問題点)だけに注目しているので、総合的な説明がされていません。このガイドラインはあくまでも一部の要素であり、ほかの知識とシンクロさせることが必要になります。たとえば、ドロップシッピングであればビジネスモデルの説明はあるが、商品の表示の問題にだけ言及しており、ドロップシッピング商法の問題点とは切り離されています。当然、それに絞ったガイドラインですので当たり前です。十分な知識のある相談員には「いまいち感」があるかもしれませんね。ここまで感じることができるのなら十分な知識を持っています。自分自身で応用させてください。

今回のガイドラインでは5つのモデルが定義付けられましたので、相談員として「共通認識」を持つには重要なガイドラインです。
自分自身の知識を補完して、さらに深めてください。

今回のガイドラインですが、私はある程度は評価しているものの、①具体的なサービスやメーカー名、商品名が例示されていないこと、②説明が分かりにくいものがあること、③総合的に問題点をまとめたら分かりやすいと思うこと、の3点から、もう少し押しがほしいところです。今回のガイドラインについて、何回かに分けて、もっと具体的に解説し、単なる知識ではなく、生きた使える知識にしていきたいと考えています。

相談員として、これらのビジネスモデルは当然知っているべきことです。知らなかったり、あいまいであったりした場合は、今一度、理解を深めてください。そういう意味で、良い資料だと思います。

最後に補足しておきます。
このガイドラインが出たのは、この5つのモデルに問題があるからということに違いはありませんが、だからといって、これらのモデル自体の存在がすべて悪いと思うことだけはやめてください。一部に問題があるだけであって、ほとんどは、きちんと運営されているからです。最初から「問題モデル」だという思い込み(バイアス)を持たずに、相談内容をしっかり見極めてください。

そのほかの参考資料
消費者庁>消費者政策課>5.検討会・研究会等>インターネット消費者取引研究会
http://www.caa.go.jp/adjustments/index_6.html
「インターネット消費者取引研究会」取りまとめについて(平成23年3月11日)
インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について[PDF:227KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_1.pdf
インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について(概要)[PDF:913KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_2.pdf
(参考)インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向け特に重点的に取り組む事項[PDF:157KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_3.pdf

消費者庁>表示対策課>景品表示法トピックス>消費者向け電子商取引表示への取組>法令・ガイドライン等
「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項(電子商取引ガイドライン)」(公正取引委員会、平成14年6月5日〔一部改訂 平成15年8月29日〕)【PDF:59KB】
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_38.pdf

月刊 国民生活 2011年11月号

①特集 オンラインゲーム
私もオンラインゲームに関して書こうと思っていたので楽しみにしていました。
どこまで突っ込んだ話があるのかなあと思ってましたが一般向けの解説でしたね。
5人の先生が別々に記事を書いているので仕方がないですが、原田先生の解説はさすがに玄人向けで面白かったです。
今月号はしっかり読んでおいてください。私も、もう少し突っ込んだゲームに関することを近々書く予定にしています。

特集1 オンラインゲームの現状
・ゲームの歴史や国内の現状、問題点について解説しています。
・RMTなどの用語も解説されています

特集2 オンラインゲームををめぐる相談等の概要
・PIO-NETから事例の紹介です。
※まさしく全国共通の相談内容ですね。相談内容だけで対応結果がないのが残念です。

特集3 オンラインゲームに係るトラブル対応
・事例1でいきなり難しい言葉が出てきたのでマニアックだなあと思ってたら、わざとだったんですね。
・アカウント停止、アイテムの消滅、強制退会、とまさしく代表例が紹介されています。
※解説にもあるとおり、「相談者が、そもそも何を言っているのか理解できないかもしれない」、というのが相談を難しくさせています。それは相談内容の共通理解ができていないだけでなく、「このやるせない心情を理解することころから相談は始まる」というとおり、相談者とのコミュニケーションのギャップが相談員への不満となり積み重なるからです。ある程度は相談員も知識を持っておくべきだと思います。といっても、実践者でない限り、学ぶ方法がないのが現実ですね。

特集4 ゲーム業界の対策と課題
・オンラインゲームでのトラブルについて解説しています。
※IDやパスワードのユーザー情報の漏洩は友達や知り合いが犯人というケースが最も多いというのは、やっぱりなと思います。

特集5 ふえるゲーム依存症
・ゲーム依存症について解説されています。また、なぜ依存状態になるのかという理由もいくつかの実例があげられています。
※廃人にはなりたくないですね。でも、そうなってしまう気持ちはよくわかります。

②チェックチェック! 苦情相談
「特定継続的役務提供の中途解約に応じない学習塾」
・難関大学の受験英語を教える専門塾に高校1年の娘が年間授業料一括払いで受講した
・体調が悪くなり7月で退塾したが、未受講分の返金は一切できないといわれた
・特定商取引法の特定継続的役務提供の学習塾に該当すると思われ、書面不備でクーリングオフも可能だったが、相談者は3ヶ月受講しているので、クーリングオフではなく中途解約を希望した
・塾は弁護士から特定商取引法の適用は受けないといわれているという
・その後、返金に応じるとしたが割引前単価で計算していたので、契約締結時の単価で清算するよう要求し、請求額どおりの返金があった。
※法律の対象になるかならないかという根本的な問題で事業者に誤りがある場合、間違いなく勝てるので対応としては簡単です。ただし、相手がなかなか応じてこない場合があるので粘りが必要です。このように明らかに違反が認められる場合は、消費者センターという名のプレッシャーをうまく活用すればいいと思います。

③ホッとティータイム
土地がないのに家が建つ?
・いつも相談現場の最前線のひとりごとを楽しみにしています。外資系のパソコンの事業者の話が出ていますが、顧客対応担当は日本語がよく分からず、なかなか解決が難しい、という書き方で、すぐに事業者がわかってしまうのは職業病でしょうか。あのメーカーも昔にくれべれば随分ましになりましたが、外資特有の交渉のツボをおさえておくことが重要ですね。

④国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース取りまとめ
・HPだけではなく雑誌にも掲載するとはなかなかやりますね。しかし、本当の問題点というのは結局最後まで表に出ないまま終わるんだろうなあと思います。

MENU
PAGE TOP