事例の質問に対する回答(2013/3/7)

質問

 明らかに消費者が業者に不当な返金を求めていた事例で、業者が全額返金をすることになりました。自分の担当ではありませんでしたが、こんな時、「そこまでする必要はありません。モンスター消費者には毅然とした態度で対応して下さい。」という思いがありましたが、相談員としてそのような場面ではどのように対応すべきなのでしょうか。
詳細を書いていませんが、アドバイスをお願いします。

レスで助言しようとしましたが長くなりそうなのでスレッドを立てました。

回答(私の個人的な考え方ですので参考ということでお願いします)

残念ながらお金で解決しようとする事業者は少なくないでしょう。
事業者にとっては、対応する手間ひまコストと賠償金とを比較したら賠償するという判断になることもあります。
例えば、手間ひまかけて20万円のコストをかけるのと、あっさり5万円のコストをかけるのとでは経営コスト的に考えると明白な選択肢です。ただし、常連化や企業イメージに対してリスクがあります。
私はそれはそれで一つの解決方法だと思います。
相談員として不本意な気持ちはあっても、とりあえずは「あっせん解決した」と考えてください。

正論がすべて通るとは限りません。
正論がすべて通るなら相談業務はとても楽になります。
本来の正解が正解にならないのだから相談業務は難しく、面白くもあるのです。
正解ではない正解という例外も存在しうると受け入れることが大切です。
カールロジャースの2:7:1の法則を思い出してください。
「1」にこだわりすぎない柔軟な頭が相談員には必要です。
今回の事例でも正論を持ち出すと、こんがらがってしまい、最終的には相談員が消費者からも事業者からも攻撃されることも考えられます。そして、結局は、全額返金という結果に落ち着きます。
あっせんの目的は、消費者と事業者の合意です。
全額返金も、事業者がいやいやでも最終的に納得して提示し合意したという事実を相談員として受けとめることです。
相談員はあくまでも影の存在で、相談対応のプロセスにおいては「全額返金するのはおかしい」というスタンダードを示してもいいのですが、それにこだわり続けるとゴールにたどりつけません。
後味が悪くても、お互いが合意したなら、「あっせん解決」という成果です。その割りきりが必要です。
事業者には、この案件が教訓となって、消費者対応のリスクをもっと考えるようになるかもしれません。
そう前向きに思うことがスッキリしない気持ちを落ち着けます。
その後に事業者と今回の解決方法について本音の意見交換をするのも一つの前向きな考えだと思います。
そのときに、相談員として「全額返金はおかしい」という考えを示すのもこれからにつながると思います。

しかしながら、このような結論になった問題の本質は別のところにある可能性もあります。
質問者さんの「相談員としてそのような場面ではどのように対応すべきなのでしょうか。」という問いに対して、「全額返金」というゴールの一場面を切り出すのではなく、それまでのプロセスもあわせて考えることが必要です。すなわち、「全額返金」という場面を相談員が自らのあっせんでつくってしまった可能性があるからです。
相談を受けた相談員は最終的に全額返金という選択肢しか残らなかったのでしょうか?聞き取りをしていく段階で、「全額返金」は過剰要求であることを上手く説明しきれたのでしょうか?
相談者の勢いに押されて、伝言役になっただけになってしまわなかったでしょうか?
通常は、センターが間に入っているのだから、事業者が最初から自ら全額返金すると言わない限り、相談員としての考えを消費者とすり合わせて事業者に提示するプロセスがあったのではないでしょうか。
今回の相談者は本当にモンスター消費者なんでしょうか?今回の事案に対しては「全額返金」というのがその消費者の価値観かもしれません。その価値観を見てモンスターと決め付けてはいませんか?
さらに、事業者に「モンスター消費者に対して毅然とした態度を」の前に、相談員が消費者に対して毅然とした対応で全額返金はおかしいと消費者に言えなかったのでしょうか。

そんなことをいろいろ考えてしまいます。
私は助言を求められたら、あらゆる可能性を考えて最適な選択肢を見つけていく作業をします。
これらのダメ出し?は終わった相談に対しての批判ととらえてはいけません。
本当は、こういう事案について相談員全員で振り返って、もっと違う対応にはならなかったのかと検証することが大切です。
検証することで、次に同じような相談があった場合には違った対応ができるのです。
そうすると、コミュニケーション能力と論理的思考力という現場力が向上します。
ただ、こういう検証をやっているセンターはほとんどないでしょうね。
1時間から2時間の議論をする時間が必要ですので現場では時間がありません。
しかし、これこそが本物のケーススタディです。内部研修で題材にしたらいいと思います。
外部研修で受けたいところですが、このようなケーススタディをコーディネートできる機関や人材が少ないのが現状でしょうね。
ちなみに私はこのようなケーススタディをするのがとても好きで、得意分野です。
今回の質問をアレンジして、この1つの事例で2時間のケーススタディの研修をつくりあげることができます。

質問者さんも、この事例を当事者に詳しく聞くか、相談データを読み返すかして、私だったら、この場面でこういう発言をして、事業者とこういうやり取りをして、最終的に、こういうあっせんあんを提示したと思う。
というシミュレーションをしてください。答えはいくつもあります。
試行錯誤することで実践力や現場力が身につきます。

センターのあっせんで「消費者の要望を事業者に伝える」という過程があります。
その過程において、消費者の要望が妥当であるかを事業者の見解も考慮に入れて相談員が判断し、すりあわせて、消費者に納得してもらいます。
これは私が「相談対応の流れ」で説明した「スタンダードの提示・現実的な提案・妥協案」という部分です。
それぞれの利害関係者(消費者・事業者・相談員)の立ち位置をしっかり認識しておくということです。
立ち位置が違えば対応も変わってきます。相談員がどの位置にいるべきかを考えながら対応していくことが大切です。

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携帯ショップへGO

以前にも記事にしましたが携帯電話の最大の春商戦が始まりました。
まずは2月商戦です。
これが3月商戦につながります。
携帯電話の契約に関する相談を受ける場合に一番大切なことは、相談者がどのような契約をしているかということを把握することです。
使い放題が主流になった今はパケット料金の苦情は少なくなりました。
あとは、オプションやコンテンツの支払の苦情が主流です。

携帯ショップへ足を運んでみて、どのような売り方をされているかということを消費者目線で体験しておいてください。
また、カタログを集めて、契約プランに目を通しておいてください。
私が感じる昨年との違いは、スマートフォンの本体割引において、アプリ使い放題や動画見放題などのオプションプランへの(強制)加入がきついと思います。
また、本体の割引も昨年ほど大きくないような気がします。
普通の携帯電話(フィーチャーフォン)は蚊帳の外という感じで、割引対象になっていない場合もあります。
商品券やポイントの額はピークに迫ってきました。
2月3月が一番おいしい時期です。
タイムサービスなどを活用して、さらに本体を安く購入しましょう。
なお、やる気満々なのはauで、ソフトバンクはやる気なしですね。

契約時のポイントとして
①購入時の本体の買い方・・・一括購入か割賦購入か、本体0円か本体実質0円か→要は毎月の支払に本体の分割料金を払うことになっているのかどうか
②契約プラン・・・スマートフォンでは組み合わせのプランが限定されていることが多い(メール使い放題プラン780円+定額パケットプラン5000円前後)。いろんな割引があり複雑。店員おすすめの基本最小プランでOK。
③購入時に割引という名目の元に強制加入させられたオプション契約、そのオプション契約の縛り(最低契約期間)・・・最初の1ヶ月の無料期間のみ、最初の1ヶ月のみ、3ヶ月まで、など

解説
①実質0円という宣伝文句のために割賦購入を理解していない場合がある。月々割などの割引があるが、割賦支払の金額と月々割りの金額が同じであることがほとんどのため、実質0円には違いないが、中途解約すると、月々割りの分だけ本体の支払が残ってしまう。
②最近は基本料金無料プランが横行している。学割が代表だが、女子割など。注意しなければならないのは割引の期間で、1年、2年、3年の場合がある。
③最近強制加入になるオプションがきつい。携帯会社はこのオプションで利益を上げようとしているようである。使う人には有用だが、月払い料金が積みあがっていく。安心保証サービスは別として、携帯会社はauのスマートパスなどのアプリ使い放題や、動画見放題などのサービスに力を入れている。一度入ってしまえば、面倒で解約しない人がおり、丸儲けである。契約時にオプションに加入するとショップにはリベートが与えられるので、それを本体の割引の原資としている。オプションは通常、一定期間契約後に解約ができるので、いつ解約できるのかをショップ店員に一覧表にして書いてもらうとよい。

分割購入は借金であることを肝に命じる

割賦購入しても、割賦の金額だけ毎月割引があるので、支払額は0円で、購入者はあまり気にしていないことが多い。なぜ携帯会社がこのような回りくどいやり方をするのかというと、割賦支払期間(2年縛りの期間)は通信料の収入が確保できるということである。スマートフォンが主流になって、この通信量は基本的につなぎ放題の定額プランで5000円前後である。契約時のハードルを低くして自社に呼び込みたいところである。
解約すると月々の割賦購入は残るが、月々割りはなくなる。
割賦購入を理解していない場合は、納得がいかないと支払を放置してしまう。すると、割賦購入=借金なので、借金を返さないというブラックになってしまう。契約者が子どもであれば将来住宅ローンが組めなくなったり、クレジットカードの審査が通らなくなったりという不利益を被ることがある。また、住宅ローンの一括返済を迫られたり、競売にかけられたりというリスクもある。最近の新聞でも頻繁にこの記事が掲載されることがあるが、あまり気にされていないようである。当事者になって顔面蒼白で後の祭りである。
もともとは携帯電話が普及し始めた頃に、電話料金が払えなくて滞納する学生が結構いた。遅れて払ったりしても携帯会社に許された時代に育った学生が今は親の世代になり、学生の頃と同じ感覚で、滞納してしまう。時払い先は携帯会社でなく、借金した会社であることを理解していない。
消費者センターが、携帯電話の契約について啓発しなければならないのはこのことである。
借金はしない、一括で払うことにしているという堅実な人でも、実は携帯で借金してしまっていることになっているという事実はあまり強調されない。
また、クレジットカードがなければ携帯電話も買いづらくなってきた。

私自身は割賦購入はせず、一括0円か割引を遣って本体価格が数千円のものを現金一括払いします。

相談員として、このような現状や歴史的経緯を理解した上で、相談に対応することは、相談者の気持ちを理解してあげるという点でプラスにもなるので、ぜひ勉強して欲しいと思います。

(その他)
LTEになってからの違い、学割3年の罠、一括0円など個別の契約プランなどについては機会があれば解説します。

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相談員の能力の査定

前回の続きです

新人相談員、ベテラン相談員、転職組相談員など相談員になった経緯は様々です。そして、相談員は一定のカリキュラムで育成された職種ではないので、その能力も千差万別です。
この専門化育成カリキュラムがないところが、相談員の資質の向上が果たせない要因になっているのではないかと思います。

それはさておき、相談員の能力を測る簡単な考え方を紹介します。
ベテラン相談員が必ずしも能力の高い相談員とは限らないことがわかると思います。

相談員資格の見直しの検討会でも相談員の能力について言及しています。
それは、相談員の能力は、「知識」と「技能」が重要であるということです。
従来の「知識」偏重から「技能」の向上に目が向いたわけです。
技能の大きな柱は「コミュニケーション能力」です。

今回、私は相談員の能力の目安を「知識」と「伝える能力」で説明したいと思います。

「知識」と「伝える能力」は掛け算で考えます。
たとえば、Aさんが、ある分野の知識レベルが100だったとします。
しかし、Bさんは80の知識レベルしかありません。
すると知識ではBさんよりAさんのほうが優れているとなります。
では、相談者にとってはBさんよりAさんのほうが対応満足度の高い信頼できる相談員になるのでしょうか。
そうとは限らないです。
これが対人能力の必要な仕事の妙技であります。
Aさんは100の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は70%でした。
Bさんは80の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は90%でした。
するとAさんが相談者に伝えることができたのは100×70%の70の知識で、Bさんは80×90%の72の知識です。したがって、BさんのほうがAさんよりも多くの知識を相談者に伝えることができました。その結果、AさんよりもBさんのほうが相談者にとって満足度の高い相談員ということになります。
最終的に、2人の能力を査定したところ、AさんよりもBさんのほうが能力は高いということです。
(72と70はわずかな差ですが、一種のたとえ話と捉えてください)

同じパターンで、Aさんのある分野の知識レベルが160だったとします。すると、Bさんの知識レベル80の2倍となり、表面的にはAさんのほうが2倍の能力があるように見えます。
しかし、実際にその相談で必要な知識は100でした。残りの60はその相談では必要のない知識でした。しかし、Aさんはその60の知識も伝えようとしました。すると、相談者はどうなるでしょうか。
長い時間をかけて必要のないことまで説明されて、どうすればよいか分からなくなります。

単純に伝える力を%として考えましたが、これを「人当たり」と置き換えてもいいと思います。

私の言いたいことが伝わったでしょうか?
相談員に必要な能力は「コミュニケーション能力」です。
知識は足し算で増やすことができます。これは、経験年数にもある程度比例します。誰もが努力すれば知識レベルを上げることは可能です。知識レベルが高ければ能力も高いと錯覚しがちです。ただし、ある一定レベル以上の知識は当然ながら必要です。
一方、コミュニケーション能力というのはその人の人格そのものです。加減乗除で図れるものではありません。性格的なものですので、簡単には変えることはできません。
私は、「相談員の能力=コミュニケーション能力」だと思っています。
相談現場で「話を聞いてあげるだけで解決する」「一般常識で十分対応できる」という知識レベルとは関係のない相談も少なくないのではないでしょうか。
このコミュニケーション能力は人付き合いをすれば分かってきますので、比較的短期間で評価することができます。
いくら大学教授や弁護士並みの知識があっても、コミュニケーション能力のない相談員は必要ありません。
あなたは、どのタイプですか?
あなたの職場のほかの相談員はどうですか?

相談員の資質の向上のための研修がたくさん開催されていますが、コミュニケーション能力が向上していますか?

コミュニケーション能力の向上を真に願っている相談員は少なくないと思います。

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