言葉の表現・言いまわし

ちょっとした伝え方の違いで相談者への印象が大きく変わる事例を紹介します。
何気なく使っている言葉も、相手の側に立つと親切でない言い方になることがあります。

非常勤や交代勤務で出勤日にあたらない相談員を指名して継続相談があった場合に相談者にどう答えていますか?
(原則として担当した相談員が継続相談も受け持ち、他の相談員が受けない場合)

①「○○は今日は休みです」

そうではなく、次のように答えてください

②「(交代勤務になってまして)○○は今日は出勤日ではありません」

この2つの違いは何でしょうか
それは、休んでいるのは誰の事情によるものなのか、ということです。
言葉は相手にどうとらえられるかで決まります。
前者の①の場合は、○○が自己都合で休んでいる、となり
後者の②の場合は、センターの勤務体系の都合で休んでいる(非番になっている)、ということです。

①のように回答した場合に、相談者はどんな反応をするでしょうか?

①「次回の出勤日にかけなおす」といってくれればいいのですが、「他の相談員に代わってくれ」といわれた場合はどうしますか
原則を貫き、「一度相談した相談員が対応することになってますので申し訳ありません」
すると、今度は、「なぜ他の相談員が対応できないのか、担当の相談員が休みなら他の相談員が対応して当たり前だろう」と苦情を言ってきます。
相談者のいうことは正論です。
そこで、「違う相談員が対応したら細かい部分で違うことを説明したらいけないので」、「担当の相談員でないと詳しいことが分からないので」、などと説明に入りますが、すでに「継続相談についての相談」ではなく、「他の相談員が相談を受けないこと」に対する苦情に変わってしまっているのです。
こうなれば、収拾がつかなくなり、お互い感情的になり、「所長をだせ」となってしまいます。

それではどうしたらよいのか。
先手を打つのです
まず、②の回答により、担当相談員が勤務体系の事情により出勤日ではないことを分かってもらいます。
そのうえで、相談者に聞かれる前に、相談員から質問を投げかけるのです。
③「明日が出勤日ですが、お急ぎでしょうか?」

この問いかけの反応に対しての答え方を決めておきます。
・複雑な案件の場合は、出勤日にかけなおす場合が多いので、電話があったことをメモしておく(または明日こちらから電話するようにします)と伝える
・複雑な案件の場合で、どうしても対応して欲しいといわれた場合は少し難しいのですが、「簡単なことだったら分かるのですが・・・」など、今相談するとベストな回答がもらえない可能性を示唆するなど、少しテクニックが必要かもしれません。
・もし、クーリングオフの書き方などであったら、答えてあげましょう。
・この対応でも、苦情になる場合もあると思いますが、ある程度は避けられないことですので、そういう事態は最小限にとどめておきましょう。

人間の心理として、①「○○は今日は休みです」といわれたら、「相談するために電話をしたのに、なぜ勝手に休んでいるのだ」とマイナスイメージを持ってしまいます
2人の関係がマイナスから始まるのではなく、フラットから始めるために、②③で会話の主導権をで握っておくのです。
相談者が質問するのではなくて、相談員が質問するのです。
出勤日ではないけど、きちんと対応しているという姿勢を示すことが大切です。

ちょっとした言葉の言い回しで、相手がうけとる内容や印象が変わってくるのは、今回紹介した事例だけではありません。
相談者や事業者との言葉のやり取りすべてに共通するものです(他のシーンでの事例はその都度紹介します)。

(平成23年4月21日 初稿)
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声の質 その1

第一印象 ファーストコンタクト その1その2その3 において、「ノンバーバルコミュニケーション」のなかの「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなどの聴覚情報」の重要性について解説したところです。
今回からは、ファーストコンタクトに限らない相談対応の「話し方」のうち「声の質」全般について解説したいと思います。

最初に復習です。
コミュニケーションにおいては、「バーバルコミュニケーション」ではなく「ノンバーバルコミュニケーション」が重要となります。→「ノンバーバルコミュニケーション」の記事を参照
【抜粋】「バーバルコミュニケーション」である「話す言葉の内容などの言語情報」に、「ノンバーバルコミュニケーション」であるの「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなどの聴覚情報」や「顔の表情・見た目・しぐさ・視線などの視覚情報」の要素を上手く加えることで、コミュニケーションをより良好に保つことができるのです。

電話相談において相談者の感情を左右するのは「声(聴覚情報)」と「内容(言語情報)」です。
来所相談においては、これに「表情(視覚情報)」が加わります。
(「表情(視覚情報)」については別途解説します)

同じ相談内容にも関わらず、あっさり解決する、感謝される、怒らせてしまう、長時間に及ぶ、など、対応する相談員によって、相談者の反応は全く異なります。最悪の場合は苦情になったりもします。
なぜでしょうか?
ふたつの原因があると思います。
ひとつは、相談内容がうまく聞き取れなかったり、うまく説明(説得)できなかった、などの話す(伝える・説明する)内容自体の問題(言語情報)であることです。
もうひとつは、話しているうちに相談者の感情が高ぶってしまい悪い方向へ変化して、修正できずに、問題の争点がずれてしまうことで、上から目線・早口・言い合いなど話し方である「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなどの聴覚情報」が原因となることがあります。

前者は、問題解決能力の向上=技術的な向上がポイントとなり、後者は人間性の問題となります。
コミュニケーションの入り口としての「話し方」について、「声の大きさ・通る声・トーン・テンポ・感情・親しさ」の観点から解説していきたいと思います。

※可能であれば、講習会で実際に実践しながら解説したいところです(リアル講座の1回目の実施内容に考えています)。

(平成23年3月24日 初稿)
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第一印象 ファーストコンタクト その3

来所相談でのファーストコンタクについて書きたいと思います。
ここでは、あくまでも、消費者と相談員が最初のあいさつを交わすまでに付いて述べたいと思います。
電話相談と違い相手の姿が見えます。当然ながら相手から相談員の姿が見えるというところで、声だけではなく態度にも気をつけなければならないので複雑になります。

目標は、電話対応と同じ、消費者に安心してもらい、お互いの信頼関係を築き、心を開いてもらうことです。
相手が見えるだけあって、うまくいけばスムーズです。
しかし、ひとたび関係が崩れるとその場から逃げ出せないために対応に困難を伴います。
ここでのポイントも電話と同じマイナスを出さないことです。

しかし、前提として消費者は弱い立場なので、消費者センターの対応が少々まずくてもトラブルになることは少ないと考えられます。
(最近はそうでもないのですが、これについてはべつの機会に)

消費者はトラブルを抱えてすがる思いで消費者センターに相談に訪れます。
普通は電話相談から始まるのですが、来所から始まるということは、よっぽどの内容ではないかと考えておくことも重要です。
すでに怒り心頭で、いきなりまくし立てることもあります。

ここでは初期対応、すなわち受付は誰がするのか、について考えます。
こればかりは消費者センターによって体制が異なります。
大きな消費者センターでは相談員が応対するかもしれませんが、小さな消費者センターでは受付の事務職員、行政職員、アルバイトなどが対応すると思います。
相談員が受付対応するのであれば「ツボ」は分かると思いますが(分からない相談員もいますが)、それ以外の人が受け付け対応する場合は、どれだけ受付がマニュアル化されているかに限ります。
マニュアル化といえば堅苦しいですが、いかにトラブルなく相談員に引き合わせるかが、受付の絶対使命です。

来所相談は顔が見えるだけに電話と違ったアドバンテージがあります。
それは、相手の相談内容のトーンが推測できることです。
大きな荷物を持っていたら商品かな、封筒を持ってたら請求トラブルかな、息子に連れられたお年寄りか、親につれられた子どもか、すでに興奮してそうなのか、いかついのか、少しおかしそうなのか、などなど
先入観は良くないとは言いますが、外見からかもし出されている雰囲気を感じ取り、対応のミスをなくす(マイナスをなくす)ために活用したらよいと思います。

受付では、笑顔で親切に対応するのがいいのでしょうか?
賛否は分かれると思いますが、私は電話相談と同じように淡々と対応したらよいと思います。
まあ、相手にもよりますが、いきなり笑顔でニコニコと話すと、怒り心頭の消費者の場合は逆燐に触れることもありますので、淡々とした方がいいのではと思います。

さて、受付では、相談受け入れ可能条件を確認する必要があります。
このタイミングは消費センターによって違います。
受け入れできない場合の対応について、しっかり対応できるようにしていてください。
受け入れ不可能とは、住所地が違う、近隣トラブルである、事業者間のトラブルである、など、相談可能範囲は消費者センターによって異なります。
受付できない場合は、電話と違い、せっかく来所したのに、たらいまわしにする、という新たなトラブルが発生します。
行政サイドとしてはあたりまえのことなのですが、消費者としては理不尽で受け入れられません。
そして、できないことを説明するときに、その話し方を含めた対応が新たな苦情を生んでしまうことがあります。
受け入れできる場合と受け入れできない場合、そして受け入れできない場合はスムーズに関係部署を紹介する、という対応をマニュアル化しておいてください。

さて、受け入れできるかどうかは、どうやって確認するのでしょうか
相談内容を聞かなければわかりませんよね
実際に相談対応する相談員であれば問題は少ないのですが、受付など違う人が確認する場合、どこまで相談内容を聞けばいいのか、しっかり考えておく必要があります。
消費者によっては、いきなり相談内容をまくしたてるときがあります。
そんな場合、実際に対応する相談員に同じことを説明することになり、さっき言ったばかりだろうという苦情にもなります。

以上のように、こまかく考え始めるときりがないですよね。
ただし、これは、最悪の場合を想定しています。
最初に言ったように、前提として消費者は弱い立場なので、消費者センターの対応が少々まずくてもトラブルになることは少ないと考えられます。

しかし、こういった細やかなことが自然にできるような相談員であれば、おのずと相談対応・コミュニケーション能力にすぐれているともいえると思います。

そして、相談者と相対した相談員は、「相談員の○○です」というあいさつから本題に入っていきます。
この時点で、マイナスがない、むしろプラスの状態であれば、以後の話もスムーズに進むのではないかと思います。

※来所相談におけるノンバーバルコミュニケーションの「顔の表情・見た目・しぐさ・視線などの視覚情報」については、今回のファーストコンタクトのカテゴリーではなく、別の相談対応のカテゴリーで書きたいと思います。

(平成22年2月3日 初稿)
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