専門用語を分かりやすく伝える

消費生活にかかわる専門用語は数多くあります。
消費者との相談対応の中で、これらの専門用語を分かりやすく伝えることが大切です。

と、当たり前のことを書きましたが、本音は違います。

『専門用語を使うなよ!』ということです。

相談員自身が当たり前のように消費者に対して専門用語を使っていることを自覚してください。

たとえば
「特商法」・・・特商法では~は禁止されているから~です。
「抗弁書」・・・まず、カード会社に抗弁書を書いてください。
「特別送達」・・・本物の裁判所の場合は特別送達で郵送されます。

これらの用語は、消費者センターの中の相談員や職員では当たり前のように使っている言葉ですし、当たり前に使ってもかまわないと思います。逆に、当たり前に使えなければ修行不足です。
しかし、消費者に対して、当たり前のように、無意識に使った覚えはありませんか。
第3者から見ればよくわかりますが、相談員自身が自覚していない場合が多く見受けられますし、指摘したとしても改善されないことも多いです。

消費者センターに相談に来る消費者の知識レベルを考えてください。
なぜ、消費者センターがあるか?
事業者との知識・情報レベルに圧倒的な差があるからこそ法律がありセンターがあるのです。
これらの言葉を知っている消費者であれば被害にあうことも少ないでしょうし自力で解決できることも多いと思います。

不安になって相談に来ているのです。
聞いたこともない専門用語が出てくれば、悪質業者にだまされたときと同じ記憶がよみがえります。

それでは、相談員のみなさま、消費者に分かりやすく伝えるには、この3つをどう説明したらよいでしょうか、考えてください。
私の答えは、この文章の最後に書きます。

最近、池上彰の書籍が大量に売られており、しかも多くの年代が購入しているようです。
テレビでもおなじみの難しい社会問題などを分かりやすく説明しています。
分かりやすく説明するということを。いざ、自分がやるとなると難しいですよね。
非常に重要なスキルですので、相談員としての消費者との言葉のやり取りを思い返してください。

答え
あくまでも私だったら、こう置き換えます。
「特商法」・・・訪問販売に関する法律
「抗弁書」・・・請求を一時的に止めてもらう依頼書
「特別送達」・・・はんこが必要な書留郵便
一字一句正確である必要はなく、イメージが消費者に伝わることが重要だと思います。

(平成22年8月1日 初稿)

国民生活研究 2010年6月号

国民生活研究は国民生活センターが年に4回発行しており、消費者問題をはじめとする生活問題について掲載した調査・研究誌です。
論文ゆえにすぐに眠気に襲われ、読むのがつらいです。
2010年6月号には、「不招請勧誘」と「重要事項」についての論文がとても勉強になるので紹介します。
詳しくは本誌を読んでください。
といっても、一般的な本ではないので入手は難しいかもしれませんね。

①【論文】不招請勧誘規制のあり方について(上)
津谷 裕貴(弁護士)
②【研究ノート】不招請勧誘を規制する法令等の現状
福井 晶喜(独立行政法人国民生活センター)

・「不招請勧誘」
難しい言葉ですね。字を分解すると「招くことを請われるのを不とする勧誘」いうことですね。
さまざまに定義されているのですが、①の著者は「事業者が、消費者からの要請がないのに、一方的に、電話、訪問などによって、消費者に契約締結させようとする行為」と定義づけていますので、意味は理解できると思います。
・勧誘行為は、電話と訪問に限られており、電子メールやFAXが含まれていません。また、ダイレクトメールも対象外です。電子メールやFAXは、対象にしてもいいのではと思います。
・「オプトイン」と「オプトアウト」
optを辞書で引くと「選ぶ」とありました。イン(入ってくることを)選ぶ、アウト(出て行くことを選ぶ)と読むとわかるかもしれませんね。
「オプトイン」とは、消費者の事前の要請や承諾がなければ勧誘してはならない・・・原則、すべての事業者からの電話や訪問はダメ→不招請勧誘の禁止
「オプトアウト」とは、消費者の勧誘拒絶の意思表示があれば勧誘してはならない・・・個別に○○は勧誘してはダメと要請すれば、その事業者からの電話や訪問はダメ
ただし、どちらに該当するかは法律により、異なっており、たとえば金融商品取引法の店頭デルバディブ取引などはオプトイン(不招請勧誘は禁止)となっているが、特定商取引法ではオプトインではなくオプトアウトとなっています。
・「消費者の権利 新版」正田彬(岩波新書2010年2月19日)
が引用されており、とても面白い考え方です。興味がある人は読んでください。
不招請勧誘規制は、消費者の権利と事業者の営業の権利をの観点から調整が図られてきた経緯がある。
この本では、安心して生活する基礎は消費生活の権利の確立であって、事業者の営業自由は消費生活の権利を前提としたものだから、消費者の権利と事業者の営業の権利を調整するという発想であってはいけない、と書かれているという。
・「訪問販売お断り」ステッカーについては次号で解説されます。

③【研究ノート】消費者契約法4条の「重要事項」の意味-最高裁判所平成22年3月30日判決を受けて-
宮下 修一(静岡大学大学院法務研究科准教授)
「学納金返還訴訟」と「
・4/7までに補欠合格が予定されている大学に4/5に入学自体をした場合に授業料等の学生納付金は一切返還しないとした学納金返還訴訟で、当該特約は有効との判決です。
従来の3月末までに入学辞退した場合は授業料については返還すべきという判例は踏襲するが、4月以降はダメだという解釈のようです。次号に詳細に解説されるようです。
・将来における金の価格が「重要事項」には当たらないとの判断です。
重要事項を「限定的」に解釈することについて意見が書かれています。

国民生活研究 第50巻第1号(2010年6月)
年4回発行 定価620円(税込み)

カンブリア宮殿 (ゲスト ソフトバンク 孫正義)

テレビ東京系列で毎週月曜日22:00~22:54に放送されている超おすすめ番組の「カンブリア宮殿」の7/12・19と2週連続でソフトバンクの孫正義社長がゲスト出演していました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/list/list20100719.html

消費者目線という言葉が何度も出てきました。
新しい携帯端末をつくるに当たっても「つくり手」の都合ではなく、消費者に使い勝手のよい製品にするために、開発の途中で何度も社長自らチェックをする。開発の終盤でチェックしても手遅れになるからである。
また、ツイッターで消費者から電波に関する情報開示などの要望に、すぐに反応しサービスの質を向上させる。

これらのことから、商品に対しての消費者目線やサービスに対しての消費者目線を第一に考えていることは理解できました。
実際にソフトバンクが携帯電話業界にもたらした影響は大きく、料金の引き下げに結びついたり多大な貢献をしてきたと思います。

ここまでしているのに、「何でこうなるの?」と思います。
消費者センターにかかわっている人なら、みんな思っているのではないでしょうか。
そんなに、いい商品やサービスを持っているのに、何でこうなるの?

その要因として私が考えるのは
一番大切な、消費者に対する消費者目線がもてていないのではと思っています。
社長、製品のつくり手、サービス提供などの努力や思いは十分わかります。
社長やつくり手という「川上」のすばらしさが、「川下」、すなわち、店頭販売で消費者に直接相対する販売員とのコミュニケーションという最も大切な部分での消費者目線が欠けているのではと思います。
複雑な料金プランや料金設定などに対して、消費者が十分理解できていないまま契約にいたっているという現実です。
店頭で説明したし同意書もとっているといいますが、それは単に「伝えた」だけであり、実は「伝わっていない」のです。
携帯電話が一部の消費者のアイテムであった時代は終わり、老若男女すべての消費者のアイテムとなりました。
ドコモやauにくらべて、月々割などの割引制度がかなり複雑です。
携帯電話業界はソフトバンクが先陣を切って革命を起こしてきたし、今後もそうなると思いますが、「川下」での対応が今のままであれば残念で仕方がありません。
「仏つくって魂入れず」という言葉に似ているのでしょうか。

今回の放送を見て、孫社長はやはりすばらしい企業家であることは再認識しました。

また、ソフトバンクなど携帯電話の料金プランについては別途解説したいと思います。