相談員資格の検討会 中間報告 解説 その2

2・3・4で相談員資格の法律への位置付けについてまとめられています
何度も出てくるフレーズが
「今回の相談員資格を法律に位置付ける目的・理由が消費生活相談の全国的な質の向上や水準の確保、消費生活相談員に対する信頼性の確保等にあること」となっていますが、具体的な理由の解釈に筋が通ってないような気がします。


2.相談員資格を法律に位置付ける必要性

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【3資格の課題】
現在、消費生活相談員に関する資格としては3資格があるが、この3資格については、いずれも試験又は講習のみで資格が付与される形である、コミュニケーションスキル等の担保が十分でない、知識中心の試験に合格しただけで実務を知らずに資格が付与される、消費生活の変化や制度の改変に対応して継続的に消費生活相談員の知識・技能を維持・更新する仕組となっていない等の課題が指摘されている。

知識中心の試験制度が課題とありますが、コミュニケーションスキルの担保を試験の段階で求めるような資格はあるのだろうか?通常、資格を取得すれば、業務の中で技能を向上させていくし、技能を向上させなければペーパー資格者として能力を認められない、というのが一般的ではないでしょうか。ここまでのレベルを試験で求めて、それなりの報酬があるとかといえばワーキングプアの相談員。なり手不足が明白になるのでは。そうすると試験での合格レベルを下げなければ人材の確保ができないとなればおかしな話。また現職相談員にも当然同様のハードルを課すべきだと思うし、そうすれば不合格者も当然出てくると思います。この試験については後の5で説明されています。

【相談員資格の位置付けが不明確】
また、相談員資格の法律における位置付けが不明確であるため、消費生活相談員があっせん等にあたって、事業者や消費者からどのような資格を有しているかを問われて回答しても、納得を得られない場合があり、このような場合には十分なあっせん等を行えないなどの問題も生じている。

「納得を得られない」のは一部のクレーマー的な相手を除き相談員の説明能力に問題がある場合が多いのではないかと思います。相手を納得させるだけの説明能力がないから、相談員は何だと言われることもあります。
とはいえ、法律にきっちり位置付けられていることは信頼の証であると思います。
つまり、ネガティブなことに対処する(言い訳する)ための位置づけではなく、プラスの表現(相談員は法律でその職がきちんと位置付けられていますので安心して相談してください)としての位置付けであるべきだと思います。

【消費生活相談を担う人材の確保】
さらに、地方を中心に3資格の保有者が不足している状況にあるが、消費生活相談の質の向上を図るためには、相談員資格に対する社会的評価を高めるとともに、国と地方が連携して積極的に人材養成を図ることにより、消費生活相談を担う優秀な人材の確保につなげていくことが求められている。

この部分は無理やりのような気がします。資格を取れば専門職として行政職員なみに給料がもらえるというのであれば人材の確保につながると思いますが、ハードルだけ高くしてもせまい世界では効果は少ないと思います。

以上の背景の説明があり結論が書かれています。

このため、
① 行政や消費者団体等の民間において行われている消費生活相談の質の向上と全国的な水準の確保を図るとともに、
② 消費生活相談員に対する消費者からの信頼を一層向上させ、また、事業者との関係においても、関係機関との連携を図るにあたっても消費生活相談員が専門職であることをより明確にし、
③ さらに、相談員資格に対する社会的評価を向上させるために、
消費者等にとって分かりやすく、かつ、消費生活相談員に必要な知識・技能等を十分に担保する新たな資格を創設し、法律に位置付けるべきである。

ここの理論構成も前の部分と同様で、①②③は分かるが、これらを実現するために、「新たな資格を創設し、法律に位置付けるべき」という部分の理解が、どうしても「新たな試験制度の創設」につながってしまい、「現状の制度を維持しながら資格制度を整理して法律に位置付ける」という発想にならないのは残念です。すべての前提が「新たな試験制度」の創設ありきで進んでいるような気がします。

なお、検討会においては、相談員の資格として現行の3資格で「十分である」としている消費生活センターもあることから、新たな資格を法律に位置付ける場合には、現場に混乱を招くことのないよう、自治体や消費生活相談員等の意見に十分配慮して検討する必要があるとの指摘もあった。

最後に、今の制度のままで十分だという意見も載せるべきだと検討会で議論になったので付け加えています。さらに、初期の段階で地方の相談員や地方のセンターから聞き取ったアンケート結果を尊重すべきだとの強い主張もあり、報告書に抜粋されているもののほか参考資料として添付されています。


3.法律に位置付ける相談員資格の想定する相談員
特にコメントしにくい分かりにくいトピックスですね。

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どのような消費生活相談員を想定して相談員資格を法律に位置付けるかについては、
① 消費生活相談員が有すべき知識・技能等を担保し、消費生活相談員全体に取得することが求められるベースとなる資格として位置付ける
② より高度な知見や専門性を有する消費生活相談員等のための資格として位置付ける
③ ベースとなる資格を有していない者に対する補完的な資格として位置付ける
という考え方がある。
この点については、
・ 今回の相談員資格を法律に位置付ける目的・理由が消費生活相談の全国的な質の向上や水準の確保、消費生活相談員に対する信頼性の確保等にあること
・ まずはベースとなる相談員資格の位置付けが必要であること等を踏まえると、法律に位置付ける相談員資格は、①の消費生活相談員全体に取得することが求められるベースとなる資格として位置付けるべきである。
一方、現在でも地方を中心に3資格のいずれも保有していない消費生活相談員が一定数いる状況にある中で、資格保有者を増やしていくことが必要である。
このため、地方において試験・講習の受験・受講機会を十分に確保するなど、地方においても円滑に資格を取得できるようにすることが必要である。

①②③から選択するとなると②③は当然除外であるのは分かるとして、後半の説明がばらばらでいまいちのようなきがしますが、特に気にせずスルーししたいです。「今回の相談員資格を法律に位置付ける目的・理由が消費生活相談の全国的な質の向上や水準の確保、消費生活相談員に対する信頼性の確保等にあること」の部分が前のところと同じ理論展開になっています。


4.相談員資格を法律に位置付けることの効果及び「消費生活相談員」職の法律への位置付け
(1) 相談員資格を法律に位置付けることの効果

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相談員資格を法律に位置付けるに当たって、どのような効果を求め、どのようなものとして位置付けるかについては、以下のようなことが考えられる。
① 人材確保・資質向上等のための資格として位置付け
② 名称独占・業務独占資格として位置付け
③ 行政の職に係る任用資格として位置付け
④ 一定の業務を行う団体の必置資格として位置付け
この点については、
・ 今回の相談員資格を法律に位置付ける目的・理由が消費生活相談の全国的な質の向上や水準の確保、消費生活相談員に対する信頼性の確保等にあること
・ 消費生活相談員は個人として独立してあっせん等を行うものではなく、消費生活センター等の中でその役割を果たすものであること
・ 現在3資格のいずれも保有していない消費生活相談員が一定数おり、また、自治体ごとの事情があるため、一律に任用資格を定めることは困難であること
等を踏まえると、②~④のような効果を伴う資格制度とするのではなく、①のような消費生活相談を担う人材の確保や資質の向上のための資格として位置付けるべきである。

ここの説明もいまいちばらばらで何が言いたいのかよく分かりませんが、「相談員資格を法律に位置付ける」とことが「消費生活相談を担う人材の確保や資質の向上」につながる効果があるとしています。こんな単純論理ではないと思います。

(2)「消費生活相談員」職の法律への位置付け

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現在、自治体において消費生活相談を行う消費生活相談員については、「相談について専門的な知識及び経験を有する者」と間接的に規定されているだけであり、消費生活相談員があっせんを始めとする消費生活相談を職責とする者であることが明確になっていない。こうしたこともあり、あっせん等において消費生活相談員が事業者とやり取りをする際に、事業者等からその役割を理解してもらえず、あっせん等を行うに当たって支障となっている場合もある。
このため、自治体において消費生活相談を行う者としての「消費生活相談員」職を法律に位置付けることが必要である。

「支障となっている場合もある」という表現についても検討会で現実にそうなのかどうかというところの相違で議論になりましたが、ぼやけて残すことになりました。
結論としての「このため、自治体において消費生活相談を行う者としての「消費生活相談員」職を法律に位置付けることが必要である。」という部分については同意しますが、どのような位置付けにするのかで考え方が異なります。
私は単純に資格の有無を問わず、行政で相談業務に従事している相談員を「消費生活相談員」職として吏員制度等により位置付けるという主張をしたいと思います。
(つづく)

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相談員資格の検討会 中間報告 解説 その1

相談員資格の検討会についての記事がだらだらと続いて申し訳ありませんが、相談員にとって重要な報告書ですのでしつこく取り上げています。
あくまでも中間報告の段階ですので、みなさんが意見をたくさん出して実現性のある最終報告書になってほしいと思います。

中間報告のまとめ的な意味を含めて、中間報告の要旨を順番に抜粋していきたいと思います。
それと、そこに至るまでにどんな議論があったのかや私自身の考えをはさんでいきたいと思います。

消費者庁HP

ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf


「はじめに ~消費生活相談の歴史的沿革~」
冒頭に消費者相談の歴史について書かれています。この部分は消費者相談というのが民間団体から発展を遂げてきたということを示したいというNACSや全相協の主張で最後の方の検討会で追加されました。
読んでいただいたらわかるように、いかに民間団体がかかわってきたかということが散りばめられていると思います。
この冒頭部分でNACSや全相協がどんな考えをしているのかはみなさんで想像されたらいいのかなと思います。


1.消費生活相談における資格の必要性
(1) 消費生活相談及び相談員資格を巡る現状
・ここ数年での相談件数や相談内容の推移を説明しています。
※最近やたらと、「スマートフォンやその関連サービス」についての相談が増えていると強調されています。
スマートフォンの研修も見かけられますが、もう少し現場で直接活用できる内容がほしいところです。
このサイトでもスマートフォンについては順次取り上げていますが、今後はもっと本格的に取り上げようと思っています。
・自治体での相談員の数が示されています。(平成24年4月1日現在)
3355人、資格を1つ以上保有している割合が77.9%の2614人
・3資格の概要と試験内容一覧
・有資格者の地域別割合に偏りが見られることが示されています。
本当は都道府県や市町村単位の割合もあると思いますが公表できないのかもしれませんね(調べたらすぐに分かると思いますが)。
(2)消費生活相談の意義
消費生活相談とは何かということが法律的な根拠を含めて書かれています。
抜粋してコメントしたいと思います。

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① 消費者からの相談に対し、適切な助言を行うとともに、消費者問題・消費生活についての必要な情報の提供や関係機関の紹介を行い、
② また、商品及び役務に関して事業者と消費者との間に生じた苦情・紛争について、消費者の利益の擁護及び増進の観点から、情報の質・量、交渉力等の格差を勘案して、専門的知見に基づき、あっせんによりその解決を図るとともに、
③ さらに、相談の中で得られた情報を関係行政機関等に対し提供すること等により、消費者被害の未然防止・拡大防止を図る

簡単に言い換えると、「①は助言と情報提供、②は事業者と消費者とのあっせん、③は消費者啓発」であり、基本的なことです。ただし、②は基本的には行政が担う業務であるということがポイントだと思います。もちろん、行政以外の団体やPLセンターなどでも実施していますが、やはり行政が間に入ってあっせんするという意義は大きいと思います。後述しますが、相談員資格を行政の資格ではなく民間を含めた資格にしたいという消費者庁の意向と矛盾するものを感じます。
(3)消費生活相談における資格の必要性
ここの部分が相談員資格の検討が必要であるという主張の要の部分だと思います。
この部分はしっかり熟読してください。以前から書いているとおり私はこの理論構成に無理があると考えています。

9ページ(下線は原文どおり)

消費生活相談員は、消費生活相談において中心的役割を果たすものであり、消費者と事業者の情報力・交渉力等の格差を埋めるという重要な役割を担っている。消費生活相談が消費生活の多様化等に伴い近年ますます広範化・複雑化・高度化している中で、消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠である。そして、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには、消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要である。

・消費者と事業者の情報力・交渉力等の格差を埋めるという重要な役割
・消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠
→この2つについては異論のないものです
・消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには
→これも重要なことであり、こからが一番大事な結論部分です
・消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要
ここの部分の解釈がバラバラで論点が明確になっていない原因だと思います。
「資格制度を充実する」ということが何を意味するのか
→国は「法律に位置付けられた新しい資格制度・試験制度を創設する」そして、「その新しい制度の中で相談員に必要な知識や技能を担保する」としています。さらに、「資格制度の中に更新・研修制度をとりいれ継続的な質の維持を図る」としています。この部分については、報告書の中に順番に説明されています。

理論構成としては
資格制度を充実相談員の資質向上
すなわち、「資格制度を充実」させれば「相談員の資質向上」の目的を達することができるという矢印になります。
資格制度の要件を厳しくするなど実現性は別として、目的を達成することはできると思います。
ただし、「新しい資格試験の創設」「現職相談員への資格の取り直しや再試験」「無資格相談員への配慮」「民間資格とのすみわけ」「研修制度・更新制度の内容」など実現性や実効性に疑問のある課題が山積みで、検討会でもまとまっていませんし、まとまるようにも思えません。最後までこれにこだわると結論が出ない、もしくは無茶苦茶な制度になってしまうことにもなりかねません。
資格制度を充実相談員の資質向上
逆の矢印です。「相談員の資質向上」の目的を達成するには「資格制度を充実させる」ことが必要である
反対の矢印になると、「相談員の資質向上」の目的を達成するには「資格制度を充実させる」ことしか道がないという理論にはならないと思います。すると、もっと他に方法があるのではないかと。したがって、無理に今の制度を変えなくても、今の制度の中で方法を探せばいいという考え方もできます。私は、こちらの方が現実的であると思っており、その具体的な方法が「相談員研修」の充実だと考えています。
「仏つくって魂入れず」ではなく、しっかり「魂を入れる」ことこそポイントだと思います。

(つづく)

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相談員資格の検討会 中間報告 公表

第10回の検討会で中間報告(案)の最終検討が行われて、このたび中間報告が公表されました。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf

消費者庁や消費者委員会からネットで公表されている資料や報告書等が随時冊子で印刷されて送られていると思いますので、この中間報告の冊子も各地のセンターに送付されていると思います。
これらの冊子はなかなか読む気にならず、現場への影響も余りありませんが、今回の中間報告だけは、相談員全員の将来、しかもかなり近い将来に大きな影響を与えるものです。
なぜなら、全員がもう一度試験を受けなければならなくなる可能性もあるからです。
また、コミュニケーション能力等の技能的なものについても、何らかの査定を受ける可能性もあります。
だからこそ、この中間報告は、しっかり読んでおいてください。

これまでの議論では、国の思い、全相協の思い、NACSの思い、地方の思いが交錯し、ずばりという結論は見つかっておりませんが、とりあえず、中間報告がまとまりましたので、それがベースになっていくのではないかと思います。
その中でも、中心となるのが国の考えだと思います。
国は相談員資格を行政の相談員に限らず民間をも含めた相談員資格にしたいとの考えがあります。
そうすると、相談員資格そのものの意味合いが変わってきます。
行政の相談員とメーカーの客相の相談員は似て非なるものです。
それを同じラインに立たせるとなると無理が生じます。
今まで主張してきたとおり、私は消費生活相談員資格は行政の相談員に限定した資格にすべきだと思います(さらに、現に行政で相談業務に従事している相談員を「消費生活相談員」職として法律で位置付ける)。
一方、コミュニケーション等の技能は実践のなかで学んでいくものであり資格付与の要件にするのは現実的ではありません。
結局は、新たな試験制度を創設せず、現行制度を基本として、コミュニケーション等の技能を向上させるための研修制度を充実することこそが相談員の資質向上の要ではないかと思います。

しかし、中間報告では私とは方向性が異なっています。
何が適しているかを決めるのは全国の相談員の意見です。
相談員の意見も検討会で出てきてはいますが、比較的レベルの高い相談員の意見ではないかと思います。
レベルの高い相談員の意見に合わせると、研修の機会の少ない地方で何とかやっている相談員にとっては、厳しい資格制度になるかもしれません。
自分自身の能力がまだまだだと思っている相談員のほうが多いのではないかと思っています。
そういう相談員こそが声を上げなければ、とばっちりをくらいます。
そして、何も意見を出さなければ、中間報告の考えのもとに進むことが考えられます。

今後、現場の相談員の意見を集約する機会があるかもしれませんし、それがなくても全相協やNACSや直接消費者庁などに意見を述べてもかまわないと思います。
今回だけは、傍観者でいるのではなく、積極的に参画しましょう。

中間報告が出たので、しばらくは動きがないと思います。
おそらく、中間報告に対する意見を出す機会があると思いますので、私ももう一度、最終的な中間報告を見直して考えをまとめたいと思います。
また、中間報告の中で相談員が必要とする能力についてもまとめられているので、それらの能力を紹介していきたいと思います。