ジャドマニューズ 2011年2月号

ジャドマニューズは日本通信販売協会の広報誌で、以前から紹介しているところです。
ジャドマニューズ(日本通信販売協会) https://soudanskill.com/20100809/81.html

2月号の「通販110番」の記事から一部紹介し、コメントします。

通販110番消費者相談編 「商品知識を持つことでトラブルを未然に防ぎましょう!」

事例1「保存データを保証すべきだ!」
・外付けハードディスクが数回の使用で故障した。データが保証されないというが広告に表示すべきだ
→トラブルのためのバックアップはPCを使用する上で一般的なことであり、わざわざ広告に載せていないと推測できる、という回答
※確かにこの回答は間違っていませんが、もう少し消費者に配慮した言い方をしてほしいなあと思います。PCは昔のように限られた人しか使用しないのではなく、いまや老若男女誰でも使っています。したがって、一般の人にまでバックアップが常識だとは十分に浸透していないと思います。仕方がないような言い方になっていますが、数回で故障するなど、まさしく被害者なので、一般論についても上手に言葉を選んで回答したほうがいいと思います。

事例2「ポータブルナビが使えない?」
・廉価の小型ポータブルナビが思ったような性能ではないので返品したい。
→小型ポータブルなので一般のナビに比べて性能に違いがあるので、メーカーに説明を求めてはという回答。
※こういう問題は良くありますね。ナビの場合は現実の道と違うなど。基本的には品質問題なので個人の価値観が影響してきます。気持ちを受け止め理解してあげつつ、メーカーによりよい品質を要望しておくというところでしょう。

事例3「PCを買い替えたらソフトが使えなくなった?」
・Windows7を購入したが64ビット版だったため既存のソフトが使用できなくなった。交換希望したが断られた。
→OSは32ビット版と64ビット版があり購入には注意しなければならないが、広告に表示するべきであり、メーカーに要望してはと回答(後日広告に表示)。
※これこそ消費者には全く分からない世界です。どこかに表示はあると思いますが、購入者に分かりやすく表示すべきであり、特に64ビット版なら要注意です。丁寧な説明表示をすべきでありメーカーの表示に問題があるというのは同感です。
(書いた後に追記)Windows7にはあまり興味がなかったのですが少し調べてみると、大手メーカーでも何の説明なしに64ビット版が普通に表示されているところもありますね。時代の流れかもしれませんが、デメリットを分かりやすく知らせてくれるような表示が欲しいです。この問題は複雑かも。

3つの事例とも、一般的に知っておかなければならない問題ですが、浸透度を考えるとそうとは思いません。仕方がない問題としても、相手の気持ちを受け止め、可能な限りメーカーに問題点を指摘したり、消費者の気持ちを伝えたり、要望したり、できることをやってあげたらいいと思います。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

月刊 消費者 (2011年2月号)

①第7回消費者力検定結果報告
・成績上位者には月刊消費者の1年分のが記念品として贈られるそうです。
一般コース70点満点中63点以上
基本コース40点満点中37点以上
・一部の問題が掲載されていますが、それほど難しくはありません。

②消費者相談室
事例1
「電子マネーで支払った出会い系サイト料金」
・携帯電話の無料ゲームサイトを利用していて気付かないうちに出会い系サイトに入っていた。
・国際弁護士とか医師と称する女性から、「500万円上げます」などと言われた。
・会う約束の時間に行くと急用で会えないなどとして何時間もメールのやり取りが続く。
・よくある典型的なパターンですね。同様の被害をたくさん経験し、消費者センターも、お金を返してもらうための方法がマニュアル化されていますね。
・支払いはクレジットカードではなく、ビットキャッシュという電子マネーという最近のパターンです。
・この事例は6割返金になりましたが1年以上かかっており交渉の困難さが浮き彫りになっています。
・2010年4月から、前払式証票規制法から資金決済法となり、サーバー型の電子マネーも規制されるようになりました。今後も改正の余地はあると思います。

事例2
「書面での督促がないままカードの利用停止に」
・キャッシングの支払いに端数の入金を忘れて放置したためブラックリストにのった。
・実は、カードの支払いが遅れた場合、思わぬ不利益を受けるので注意しなければなりません。
・今回は、督促の電話があったのに放置してしまったとのことです。
・たまたま入金不足があることもあります。私も経験がありますが、すぐに連絡して振込みしましょう。
・この事例では文書連絡がなかったと主張しています。不当条項で適格消費者団体への情報提供を提案しています。
・不当条項で訴えてもかまいませんが、明らかに本人の不注意です。権利を主張する前に自立しましょう。

日本消費者協会 http://www.jca-web.org/
月刊 消費者

国民生活研究 2010年12月号

①【論文】消費者契約法4条の新たな展開(2) -「誤認類型」・「困惑類型」をめぐる議論と裁判例の動向-
宮下 修一(静岡大学大学院法務研究科准教授)

・前号は、誤認類型の「不実告知」と「断定的判断の提供」の解説でしたが、今号は「故意による不利益事実の不告知」です。
・眺望を売りにしたマンションを購入したが、近くに眺望をさえぎる建物が建ち、事業者は知っていた、という事例が教科書にはよく出てきますね。
・この論文を読むと、そうそう単純に契約取り消しできるものではないと感じました。

・消費者契約法4条2項は「故意による不利益事実についての不告知」があった場合に、消費者に契約取消権を付与するもので、5つの要件を必要とする。
(1)事業者による勧誘
(2)契約の重要事項等に関する消費者の利益になる旨の告知、(2)かつ(3)
(3)当該重要事項に関する消費者の不利益となる故意による不告知の存在
(4)消費者の誤認
(5)不実告知と誤認、誤認と意思表示との因果関係の有無
ポイントは(3)の故意による不利益事実の不告知
さらに、(2)かつ(3)の双方の要件を同時に満たすこと
・それぞれの要件や具体的な事例を逐条解説の事例と比べながら解説しています。
・(3)はあるが(2)がないというのもありますので、適用範囲が狭くなります。
・重要事項については、最高裁平成22年3月30日判決で限定的に解釈されています。
・商品先物取引などを元に解説しています。
・「故意」の解釈についても詳しく解説されています。
・最後に多数の裁判例のダイジェスト版が掲載されています。

②【論文】建物賃貸借契約における更新料支払特約と消費者契約法10条
城内 明

・更新料条項は有効とする判決が続いていたが、平成21年7月23日以降、地裁や高裁でむこうとする判決が相次いでいる。現在、最高裁に進んでいるものもあり、その判断が注目されている。
・20ページをこえる論文ですが、じっくり読むと面白いです。
・更新料特約では、地域差があり、京都で多い。
・更新料の法的性質について様々な議論がある
(1)家賃の補充(賃料の一部前払い)
(2)賃借権強化の対価
(3)更新異議権放棄の対価/紛争解決金
(4)賃借権設定の対価
それぞれについて、判例などを元に詳しく解説されており、なるほどと勉強になりました。たとえば、家賃の補充と考えた場合、解約時に返金がないという特約なので家賃とはみなされない、など。
・賃貸人と賃借人に情報力や交渉力の格差はあるのか
・そもそも10条の信義則違反に該当するのか
・最後に、更新料約款の差止請求が可能なのか、について述べられており、現在のところ、一般的な話ではなく、個別の事情を考慮した話になるので難しいのでは、などについて言及しています。

国民生活研究 第50巻第3号(2010年12月)
年4回発行 定価620円(税込み)