ジャドマニューズ 2011年7・8月号

「ジャドマニューズ」の最新号は、HPで電子書籍として閲覧できます。
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

7・8月号の「通販110番」の記事から一部紹介し、コメントします。

通販110番消費者相談編
「一方的な支払方法の変更には納得できない!」

事例1「前払いを指定するなら、見積もりのときに伝えるべきだ!」
・通販、後払いのつもりで見積もりを取ったが、注文後に高額なため前払いといわれた
・見積もりを出す部署と支払方法を決める部署が異なっていたために土日をはさんだことから注文確定後の連絡になってしまった。

事例2「注文直後に代引きに変更するとは失礼だ!」
・振り込み(後払い)で注文後、追加注文したが、直後に代引きにしてほしいと連絡があった。追加注文時には何も言われなかったのに信用できなくなったのか。

→両事例とも、変更を依頼した理由が相談者にはきちんと伝わっていないようなので、再度電話して説明してほしいとの助言で締めくくられています。
ルーチンワークの中で対応してしまったことが苦情を招いたのだと思います。条件が悪くなることは相手を否定することです。否定することを理解してもらうには多くのエネルギーが必要です。したがって、それに相応しいコミュニケーションが必要になってきます。そういう配慮が欠けていたのだと思います。また、それを引き起こしてしまったシステムも検証し改善していくことが必要だと思います。しかし、往々にしてその場限りの解決で終わってしまうことが多いのではないかと思います。

通販110番事業者相談編
「顧客に良かれ」が苦情の原因に

事例1「オーソリが得られないその原因はどちらに?」
・以前顧客登録(使用カードを登録)がなされ直近1年は注文のなかった顧客からクレジット注文があり、オーソリ(与信認証)が得られず、このカードでの支払いはできないと伝えて苦情になった。具体的な理由の説明もなかった。
・登録するときにカード番号を間違って登録していたが、今までは会社側で訂正して認証していたが、現在は修正入力をしないシステムに変更したためにエラーとなったものだった。
・この事情を説明したら納得を得られた。
・勝手にカード番号を修正してもいいのかという問題点が残った。
→今まで使用していたカードの認証が降りないことは本人にとっては重大事件です。覚えがないのにブラックになるのだったら、信用情報に問題が生じたのか、何かの事件に巻き込まれているのかと思います。一般的に、カードの認証がおりないとかカードの発行が拒否されることはしばしばあり、消費者センターにも相談が寄せられます。センターが介入しても、ほとんど、その理由が開示されることはありません。説明責任という点では非常に不透明な部分です。消費者が納得できるような説明システムを構築してほしいと思います。

※「顧客に良かれ」と思って会社の判断で顧客の入力情報を修正していたのですが、相談現場でも「相談者に良かれ」と思ってとった行動が、「余計なこと」として苦情になったり、信頼関係を崩したりします。その原因は先のことを考えずにその場の感情で行動してしまうことが多いのではと思います。受けた相談をどのように解決していくかを順序良く整理し、それぞれの場面でどのような行動をとるべきかを判断する能力が問われます。「相談者に良かれ」は相談員にとっての気持ちであり相談者の気持ちではないことを頭に入れておいてください。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

月刊 国民生活 2011年9月号

①チェックチェック 苦情相談
「システム障害により生じた損失の補てんを拒むネット証券」
・システム障害による損失補てんの考え方が説明されています。
・金融商品取引法第39条によれば、証券会社が顧客の株取引による損失を補てんすることは原則として禁止されている。しかし、証券会社の注文間違い等で顧客が損失を被った場合、証券会社が監督官庁に届け出て「事故」である旨の確認を受けていれば、例外的に損失補てんが認められる。
・今回の相談は、業者がシステム障害による損失を「事故」と認めず返金に応じないためトラブルになっている。
・そうした事情であっても、国民生活センターや消費生活センターのあっせんにより相談者と和解した場合、業者は事故確認を受けていなくても顧客の損失を補てんすることができる(金融商品取引業等に関する内閣府令119条1項6号)→これは知りませんでした。センターでここまでの和解あっせんの力があるとは思いませんでした。逆に、ここまでの力を持っていることは手に余るかもしれません。

金融商品取引業等に関する内閣府令・・・http://law.e-gov.go.jp/announce/H19F10001000052.html

(事故の確認を要しない場合)
第百十九条  法第三十九条第三項ただし書に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
六  消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第十九条第一項又は第二十五条に規定するあっせんによる和解が成立している場合

②暮らしの判例
「海外ツアー中、観光地に置き去りにされたことにつき、慰謝料請求が認められた事例」
・添乗員同行の海外ツアーで添乗員が点呼を怠り、観光地で専用バスに乗れず置き去りにされたとして、旅行会社に慰謝料の請求が認められた。
・海外ツアーでは、実際にサービスを提供するのが旅行会社ではなく、現地のサービス会社であり、旅行会社が間接的にしか支配できない現実をふまえ、判例でも旅行会社の席にが制限されている。
・募集型企画旅行で旅行会社従業員の添乗員のミスであったことから、この制約を受けず旅行会社の責任が肯定されたことが影響。
・その観光位置では自由行動の時間はなかったにもかかわらず、列を離れ勝手にお土産を買い団体行動を順守しなかった点は過失相殺されている。

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月刊 国民生活

国民生活研究 2011年6月号

①【論文】保証人保護をめぐる諸問題 -追補 震災と保証債務について-
酒井 恵介(弁護士)

・保証について民法の説明かをまじえて丁寧に詳しく解説されています。
・真剣に熟読すれば、かなりの勉強になりますが、26ページものの論文なのでなかなか読めません。
・構成を抜き出しておきます
第2 「保証」とは
第3 「信用保証」をめぐる問題について
第4 「賃貸保証」をめぐる問題について
第5 「保証人ビジネス」をめぐる問題について
第7 追補 東日本大震災と保証債務について

②【論文】地方消費者行政強化に向けた課題について
野本 守利(群馬県会計局審査課長(前生活文化部消費生活課長))

・群馬県の消費者行政やの現状や相談員の待遇等についてリアルに解説されています。
・特に、相談員の身分等についての解説はぜひとも読んでおくべきですね。
・構成を抜き出しておきます
第2 群馬県の消費者行政強化の取り組み
第3 消費生活相談員の処遇問題
第4 国民生活センターの見直し問題-「国民生活センターの地方消費者行政への支援」
第5 財源問題-「地方消費者行政に対する国の支援の在り方」
この中で特に相談員に関することについて取り上げます

・相談員の任用の法律的な根拠について大別して3つのパターンで整理
①特別職非常勤職員(地公法第3条第3項第3号)
②一般職非常勤職員(地公法第17条)
③臨時的任用職員(地公法第22条第2項又は第5項)
群馬県は①に規定する嘱託員として任用。
1年以内の任用期間で更新という考えではなく、新たに任用する形での継続採用になっている(勤務条件の変更があっても、更新ではないので、新たな条件で納得して採用となる)。←この考え方は勉強になりました
・任用に際して、平等取扱の原則があり、公募し、能力の実証を経て任用すべきだが、相談業務を担える人材が不足しているので公募等をせずに任用してきた。平成21年度以降は基金活用により相談員要請講座を実施し人材が豊富になってきたことから公募等の手続きも検討。
・平成21年度から、相談員の能力や姿勢を評価する「相談員評価制度」を導入し、客観的な能力の実証を確保している。背景として、22年度から「主任消費生活相談員制度」を導入し評価が必要になった。
・雇止めについて国の通知等の解釈を元に解説
・外部委託の是非について
・常勤化への要求のうち専門職採用について
今後、消費生活専門相談員、消費生活アドバイザー及び消費生活コンサルタントの各々の資格が消費者庁等の下で統一され国家資格化し、しかも高等教育機関等で、「消費生活」関係のカリキュラムが必須となるなど、劇的な環境変化があって、初めて人事当局と実質的な協議が始められると考えている。
・報酬問題について、群馬県では現行の報酬体系では「天井」に達しており、更なる処遇改善するには嘱託職員全体の処遇改善が必要
・研修
非常に限られた人員体制の中で、研修を企画、立案する職員は他の業務の兼務をしながら実施するという限界から、研修内容が限定的になってしまう傾向がある。
消費者の相談内容が高度化・複雑化している中で、研修内容についても、法律知識だけでなく、あっせんの交渉のノウハウやスキルを身につけられるような実践的な研修が必要になっており、相談業務の処理に熟知した専門的な立場からの企画、立案が必要となっている。

※相談員の身分や待遇について思うところがありますので別途記事にしたいと思います。

国民生活研究 第51巻第1号(2011年6月)
年4回発行 定価620円(税込み)