前回の続きになります。
このような相談を受けた場合にどう助言したらいいでしょうか
相談現場でもありがちな事例ですが、みなさんならどのように助言しますか?
ケーススタディとして考えてみてください。
法律の専門家の回答は
「元本も返還する必要がない」
ということになります。
その法律的な解釈は以下のとおりです。
参考
国民生活センターHP
トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > ヤミ金融に対する元本相当額を含む弁済金全額の返還が認められた事例[2005年12月:公表]
http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200512.html
本件は、貸金業法に定めのある登録貸金業者が、出資法5条所定の利率を大幅に上回る年利1200パーセントという超高金利の貸し付けをした事案である。判決は、この貸し付けが、違法行為の手段に過ぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったとは評価できないとして、元本相当額を含む弁済額全額の返還を認めた。(札幌高等裁判所平成17年2月23日判決)
『消費者法ニュース』63号38ページ
要は、ヤミ金のような暴利をむさぼる不法な貸付は、原本をも返済する必要がない、ということです。
もっとも、実務的には、元本と法定利息を超える返済をしている状況であるものの、すべての金額が不法行為による損害なので元本も含む全額の賠償の請求をしていくことになります。
では、今回の事例について考えると、無理やり貸し付けられたお金については、間がないので返済もしていない状態です。
この押し貸しが法定利率を超える違法な給付であるなら、口座に入金された元本を返済する必要がない、ということになります。
すると、今回の事例は、「法律に違反する貸付なので、元本も返す必要がないですよ」ということで終了としていいのでしょうか?
セミナーの司法書士の先生は、「これでよい、文句を言ってきても対抗できる」と主張します。
法律をきっちり準用する法律家らしい視点ですね。
私であれば、そこまで思い切った回答は出せませんね。
実際に、民法708条に該当する「不法原因給付」の適用に本当に該当するのかという疑問も残りますし、その判断は法律相談ということになるかもしれません。
消費者センターは裁判所のように法律に則った判断をするというよりも、相談者のおかれている状況を勘案して、最も適切な対応について助言(あっせん)するところです。
法律家のような判断をすれば、今回の相談者は不安な毎日を過ごさないといけないかもしれません。
そこで、消費者センター的な対応はどうすればいいのかについて、次回、考えたいと思います。