相談員資格の検討会 私の意見 その1

前回の続きです。
私が委員の方に送信した内容を順次公開します。
文章ではなかなか正確に思いが伝わらないかもしれませんが、そのまま掲載します。

はじめに
今回の議論を深めていく中で、相談員の資質向上という方向性は変わらないまでも、それを実現する手段としての資格・試験制度について、現実とのGAPを感じてきました。このままでは視点のずれた議論が進んでいくのではと危惧しています。
各方面から様々な意見が出てきているとは思いますが、核心に迫るものは議事録でも数少なく、断片的な意見が渦巻いているのではないかと思います。
もしかすると、今後まとめようがない状態になるかもしれません。

特に今回議論の中心となっている「技能評価も含めた新たな試験制度」は、実現すれば知識だけでなく技能についても評価できるものであり選抜試験としては有効なものと思います。一方、そのような試験は、当然、高いハードルが設定されるし、されるべきです。そうでないと、新たな試験の意味がなくなるうえ、少しの勉強で合格できるレベルであれば信頼性にも疑問が残ります。
そのようなハードルの高い試験であれば、それをクリアできる新規の受験者がどれだけいるのだろうか、さらに、現職だからといって大幅免除すべき理由はなく、コミュニケーション等の技能に関しても現職をふるいにかける必要もあると思います。すなわち、新たな試験に合格できない現職相談員は、資質のない相談員であるとし、やめてもらうことになる。資質のある相談員なら有資格者であろうが無資格者であろうが合格するはずです。
そこまでの覚悟があるのなら、すばらしい試験制度になると思うのですが、実際に入り口の試験でそこまでハードルを高くすることは現実的でなく、人材が不足している状態では、新たな試験制度の創設は難しいのではないかと感じています。
(実際に、技能を含めたハードルの高い試験を実施したとしたら、現職相談員の合格率は何割ぐらいだと思いますか?合格ラインをシビアにすると、私は最悪半分を割るかもしれないと思っています。そこまでにならないにしても無資格者の措置を考える以前に合格基準に達しない有資格者をどうするかという新たな問題が出てきます。また、現職全員が合格できるようなレベルの試験を検討することは無意味です。)

これまでの議論には、実現させていくときに考慮しなければならない「現実」(本音の現実)と言う前提条件が欠けており、空論にならないためにも前提条件を理解しておく必要があると思います。アンケートからも問題点については氷山の一角として理解できると思います。

前提条件
① 現職相談員に対する評価が過大である
② コミュニケーションスキルに関する研修の開催は難しい
③ 相談員という職業は人材不足である
④ 相談員が一番望んでいることは、雇い止めの廃止と待遇改善である
⑤ 資質の向上は相談員の心がけ次第である

理由
① 現職相談員に対する評価が過大である
・・・過去の検討会の議論でも備えるべき資質について具体的にあげられていたが、それらを満たす相談員はどれほどいるのか?それとは逆にコミュニケーション能力などの技能に問題のある相談員は少なくないと思う(想像する以上に多い)。だからこそ資質向上が議論に上がっているのです。新しい試験制度に現職有資格者は全員合格できる基準にあるという「思い込み」があるのかもしれません。あまり認めたくないことですが、現実を直視する必要があります。
② コミュニケーションスキルに関する研修の開催は難しい
・・・検討会の中で技能を高める研修をもっとすべきという話が出るが、全国でどれほど技能的な研修ができているのか。事例検討会の開催があるが、どちらかというと問題解決能力の向上に資することが中心である。現場で遭遇するようなコミュニケーション等の技能に関する対話・実践型の研修はあまり開催されていないし、企画すること自体が難しいと思う。なぜなら、準備に手間ひまを要し、何よりも講師となる人材が少ない(大学講師や民間講師では現場を知らないというミスマッチが起こる可能性も高い。現場を知っていてかつ研修指導能力のある講師は多くはないのでは)。一方、知識や問題解決に関しては大学の先生や弁護士が講師となり比較的容易に開催可能で、現在はこれが主流ある。
③ 相談員という職業は人材不足である
・・・試験そして任用によって選抜できるほどの買い手市場であればハードルを高くしても問題はないが、地域間格差はあるが全体として現実には売り手市場である。ハードルを高くすれば人材の確保自体が難しくなるとともに、相談員が備えるべき資質という条件を同じにするなら現職相談員も切る必要性が出てくる。
④ 相談員が一番望んでいることは、雇い止めの廃止と待遇改善である
・・・それが実現できないのなら新しい資格制度にも冷ややかであるし、新しい試験に対して負担を感じるのではないか。新しい資格を取ったら雇い止めがなくなって、ワーキングプアから脱出して行政正規職員並みの報酬がもらえるのか?それらが可能であれば安心して資質向上にも努めることができるが、生活ができるかどうかのレベルなのに資質向上や新しい試験というハードルを設定されてもアンバランスである。社会貢献というモチベーションだけでは限界がある。
⑤ 資質の向上は相談員の心がけ次第である
・・・研修に参加しさえすればスキルアップが達成されるのではなく、しっかり学ぼうという意欲があってこそ資質の向上がなされる。どんな研修をしても心がけ次第で有効な研修にも無駄な研修にもなる。相談員マインドを醸成することが一番大切であり、それを国や自治体は支援することが必要である。

以上が最初の1ページ半の意見です。中間報告(案)に対する意見の前に、総論としての前提条件について以上のように書きました。
特に「① 現職相談員に対する評価が過大である」については気分を害する相談員もいると思いますが、冷静に現実の自分自身や周りの相談員を見て評価してみると、認めざるを得ないものがあるのではないでしょうか。認めることから、次が始まると思います。
この前提条件なくして、新たな資格制度や相談員の資質向上について話をすすめることはできないと思います。
実態として、実際に資質に問題のある相談員、資質向上を目指す相談員、資質向上を目指したいがどうしたらいいのかわからない相談員、単なるパートだと考えている相談員など、十人十色です。
このサイトをご覧になられている相談員は非常に意識の高い相談員だと思います。それだけに周りの相談員に対して思うところもあるのではないでしょうか。

参考までに、第8回の議事録の26ページから27ページを紹介したいと思います。検討会でどのような相談員像が語られているのか少しは理解できると思います。一部抜粋だけでは評価できないと思いますので、ぜひ全文を読んでみてください。

議事録から抜粋・・・http://www.caa.go.jp/region/pdf/120628gijiroku.pdf

消費生活相談員に基本的に求められる能力が何かというと、人に信用されて安心させる能力というような、人としての基本的な能力ということがまずあり、更に消費者と事業者の情報力や交渉力等の格差を踏まえて対応するということですから、一定の知識を持った上で情報をかみ砕いて伝えつつあっせん等を行えるというのが基本ではないでしょうか。
どういったものが必要かを整理してみますと、商品や役務の知識、消費者関連法の知識、それから基本的な行政法規や行政の仕組みの知識などがあり、そのほか消費生活相談の対応能力ということで、傾聴技法であるとか、相談者の主張の要約の仕方であるとか、方針の見通しを立てて適切な助言ができることなどが考えられます。
ここまでは一般対応能力といったことですけれども、最近の状況をみると精神疾患のある相談者であるとか、クレーマーが多いといったことがあり、そうした相談者に対応するための技法など、プラスアルファのコミュニケーション能力であるとかカウンセリング能力といったようなものも必要でしょう。
苦情のあっせん等を行う能力ということで、公平性を基本に消費者と事業者の格差を理解しつつ、公平に判断して両当事者が納得する解決に導くことができる能力、更に、情報収集・分析能力、相談カードの入力という意味での文書作成能力であるとか、必要に応じた決裁文書等の文書作成などの行政における事務処理といったようなことも、本人が行うかどうかは別にして、ある程度の仕組みを理解たしておくことなどもが求められるのではないかと思われます。
また、個別の相談処理だけではなく、啓発や教育についても多くの自治体等で相談員がその役割を担っていますので、啓発であるとか教育を行うことができる能力というものも必要でしょう。
加えて、私がずっと言っているところですけれども、他部署、他機関との連絡調整を図るという総合コーディネート能力というようなことも必要なのではないかと考えています。
現状の消費生活相談はとても民事に寄っているところがあり、消費者関連法というと特商法であるとか割販法となってしまうのですが、食品衛生法や電気通信事業法なども消費者行政にとっては非常に重要なところですので、関連してどういう部署があってどういう仕事をしているという知識を持った上で、どういう調整ができるのかを考えられる能力なども必要ではないかと思います。
それから、やはり実務経験というか、実務能力が必要です。私は昔から相談処理は職人芸などと個人的によく言っていたのですが、でっち奉公のような感じで、ベテランの下についてどういうやり方をするのかということを経験的に学んで育っていくというような側面が結構強いので、実務が非常に重要であると思うのですけれども、その能力を客観的に判断するというのは非常に難しいと思われます。
向き、不向きというのもがあって、向いている人と向かない人というのが割と明確に分かれる職種だと思っています。現状の試験問題は知識偏重になっていますが、短い文章を記述する問題であるとか事例で書かせる問題などを入れることによってそこら辺はある程度担保していくことができるのではないかと思われます。

次回は中間報告に対する意見を公表します。

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