役所の仕事の論理
関西ローカルの毎日放送のニュース番組で、「憤懣本舗」というシリーズがあります。
最近、頭に来ていることはありませんか? その怒りは、社会問題とつながっているかもしれません。月曜放送の「憤懣本舗」では様々な怒りにお応えし、反響をいただいています。
入学しないのに入学金を支払わされる慣習に怒りを込めてVOICEが告発した『私立大学の入学金・授業料返還問題』は、政府や大学をも動かす社会現象になりました。あなたの「憤懣」をお知らせください!
9/15のテーマは「市営住宅の解体工事で周辺住民が困惑」です。
この番組では業者や役所がターゲットになっていることが多いです。
特に、役所が対象となった場合は、今回のようなケースも少なくありません。
消費者センターにもよく似た相談がある場合もありますので、役所の仕事の考え方について書きたいと思います。
※放送内容は動画で見ることができます。
市営住宅の解体工事で周辺住民が困惑
毎日放送Voice
http://www.mbs.jp/voice/
シリーズ「憤懣本舗」(毎週 月曜日)
http://www.mbs.jp/voice/special/archive/sort/funman.shtml
2014/09/15 放送
市営住宅の解体工事で周辺住民が困惑
http://www.mbs.jp/voice/special/archive/20140915/
老朽化した住宅を建て直すための工事ですが、真裏の家の住民たちが騒音と粉じんに悩まされています。大阪市が事前に説明会を開いていて、住民らもある程度の騒音は覚悟していたというのですが、いざ工事が始まると、その進め方に驚き、困惑しています。一体なにがあったのでしょうか。
ポイントとして
- 騒音がひどい。現実にもひどいが、基準内ということで問題ないとされた。
- 粉塵は基準がないといわれた。
- 説明会もあったが、事前には説明がなかった。
行政の考え方
行政の仕事は基本的に法令に則って実施しています。
これは、消費者問題トラブルでも同じで、法律に違反している事実があるのかどうか判断し、あれば、それに従って処理するし、なければ、強制力のない話し合いによって解決することになります。
これが役所の仕事の大原則であり、法令違反がないのに、何らかの規制をすると、行政が違反行為をしたことになります。
今回は「騒音を計測して基準以内だった」という事実がありますので、騒音を理由に規制をすることは難しいのです。
ただし、騒音を測定する方法に問題があったのでは?という議論になったりしますが、いまさら工事がとまることはありません。
工事が始まってみると、基準が超える場所があるなど、個別のイレギュラーが発生した場合は、個別対応となります。
工事は中止せず、対症療法的な対策をします。
一度出た結論を覆すことは困難ともいえます。
事前に、もっと対策できなかったのかといえば、今は分かるけど当事はわからないことが多いでしょう。
住民説明会でも、そこまで突っ込める知識のある人もいないし、行政側も、やることはやっているし、悪意を持って実施することもありません。結果として、こうなってしまったというところでしょうか。
実は騒音の基準は結構ゆるいのです。きつくしてしまうと、経済活動に支障が出てしまいます。
ほかの法令と同じように最低限の基準を示したに過ぎず、街宣車や車の移動販売でも同じような苦情がありますが、明らかに不快でも、基準を超えることはあまりありません。
また、基準のないものはどうしようもありません。
あとは、個別の話し合いをうまくすることです。
中止がないのであれば、一歩引き下がって、何らかの対策を引き出すことは可能です。
ここでは書きませんが、これもテクニック的なことがあります。
消費者センターの場合
消費者センターでもそうですが、根拠となる法令があり、それに違反していれば、話は早いのですが、明らかにおかしいと思っても、それが法令に違反していなければ容認せざるを得ないというのがルールです。
それを解決するには、強制力のない話し合いになり、消費者センターでは「あっせん」となります。
行政の側でも、法令がおかしいなと思っていても、おかしいと思うけど従わなければいけないことになります。
ではどうするのか?
法令を変えるのです。大変な話ですね。
それでも、消費者が声を上げて、社会問題となり、法令が改正されて、というプロセスを踏まなければなりません。
現場の行政に言っても、こういう話がありました、としかならず、国まで要望が上がって検討されるということは余りありません。
やはり、消費者が直接、国に物申す必要があります。
なかなか大変です。
相談業務の中で、このような事例にあい、消費者の怒りをぶつけられたときに、この法令の原則を上手に説明するというテクニックも必要であり、私もよく使いました。
ただし、うまく対応できない場合は、無理難題を押し付けられて、難対応消費者となってしまうことも少なくありません。
この原則は相談員として知っておくべきであり、対応方法もスキルとして身につけておくものだと思いますが、なかなか学べる機会はありませんね。
そのようなテクニックについては、機会があれば書きたいと思います。