借金問題
近年、多重債務問題が社会問題になっていることは明白です。
そして、正確ではないかもしれませんが、多重債務者を救うためには、自分ひとりで抱え込まないで、専門機関で相談を受け、最適な対応方法で解決を図るように誘導すること。
多重債務問題を解決するために数年前に国レベルで検討され、自治体で相談対応することになったと思います。
どの部署が担当するかというと、消費生活センターが相談窓口になったところが多いと思います。
それぞれの自治体では多重相談窓口のマニュアル等が作られており、どこまでの相談対応をするのかは、それぞれの自治体によって決められたています。
専門の相談窓口を紹介するところから、内容を細かく聞き取り心のケアをしながら最後まで対応するところもあると思います。
消費生活センター、消費生活相談員にとって、多重債務問題はどこまで対応すべきでしょうか。
政治的には消費者センターで対応するのが当たり前だというのが本筋でしょうね。
そして、それに従い対応している消費者センターもあります。
しかし、私は、それは本来の姿ではないと思うのです。
消費者センターは、主として、「事業者に対する消費者からの苦情に係る相談、苦情の処理のためのあっせん、情報を収集し提供すること」と、消費者安全法にも明記されています。
すなわち、対事業者との契約や商品の問題を解決することにあると思います。
そして、それらに対応するには、民法・消費者契約法・特定商取引法などの膨大な専門知識を学び、対応していかなければなりません。
一方、多重債務問題は、個人的な問題で、対事業者というよりも、個人の債務の状況を把握し、過払いがあれば処理し、破産するのであればどんな方法をとるのか検討し、最終的に裁判所などで処理をするという個人の問題だと思います。
これって、消費者問題には違いないと思うのですが、本来消費者センターで扱うべき問題ではないと思います。
消費生活相談員でなければ対応できないという問題でもないと思います。
多重債務の問題は、事務量が膨大でしょうし、時間もかかり、場合によってはメンタルケアも必要とします。
消費者センターがひまで仕方がないのなら、対応してもいいと思いますが、今の消費者センターは多忙です。
そんな多忙状態の中で、繊細さが必要な借金問題を扱えば、消費生活相談員は精神的に疲れきってしまうと思います。
消費生活相談員ではなくても対応できる借金問題は消費者センター以外で対応すべきです。
消費者センターでは専門機関への誘導までの対応に徹すべきだと思います。
もちろん、多重債務の原因が、次々販売などの契約によるものであれば、当然、契約問題の対応まではすべきだと思います。
もし、みなさんの消費者センターが誘導だけの業務ではなく、突っ込んだ対応までも消費者センターでしなければならないのであれば、それぞれの自治体の行政的な問題だと思います。
多重債務問題で「国は消費者センターをもっと支援すべきだ」、ではなくて、消費者センターは誘導窓口となり、消費者センター以外の窓口で多重債務問題を処理できるような体制を、それぞれの自治体で確立すべきだと思います。
もし、そうでないのなら、行政にそのような体制を要求し、国にも支援を求めるべきです。
そして、行政も多重債務問題であれば行政職員の退職者の嘱託職員でも十分対応できると思います。
多重債務問題の法整備などを国に求めるのはかまいませんが、疲れきってまで消費生活相談員がすべきことではないと思います。
本来業務に精勤してほしいと思います。
(平成23年3月5日 初稿)
追伸
半年経過して読み返しました。
多重債務問題に対して真正面から受け入れて対応している消費生活センターもあり、相談員の苦労を考えたら頭が下がる思いです。
基本的には私の考えは変わっておりませんが、本当にこの考えでいいのかどうか悩んだりします。
(平成23年10月)
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