「は」と「が」では大違い

「は」と「が」は文章の主語に使います。
相談者への説明の中で、この違いを意識したことがありますか?
この違いは「苦情」と「感謝」というぐらいの差のとらえられ方を相談者に与える場合があります。
ちょっとした、コミュニケーションのポイントです。

ある相談に対して相談員が事業者に問い合わせる(申し出る)ことを相談者に説明する場合における次の2通りの表現を比較してください。
①事業者に問い合わせることできます。
②事業者に問い合わせることできます。

どんな印象をもたれましたか?
そして、みなさまはどちらの表現を使うことが多いですか?

もちろん相談内容の背景がいろいろあると思いますが、最終的には同じだと思います。

①・・・事業者に問い合わせることはできますが、それ以外のことはできません
②・・・事業者に問い合わせることができますので、センターから申し入れます

①は否定的な表現(BUTでつながる)で、②は肯定的な表現(ANDでつながる)に感じますよね。
やることは同じなんです。

おそらく、①の背景として、相談者から無理な要求や消費者センターでは解決できないような相談があったり、粘られた場合に、何もできないとは言いにくいので、「事業者に問い合わせることだったらできますよ」としょうがなく回答していることが考えられます。
その場合に相談者の反応として、「問い合わせることしかできないのか、解決しようという気持ちがないのか、消費者センターは何ができるんだ・何のためにあるんだ」と苦情として返ってくる場合があります。
また、変に期待を持たせるといけないと思い、センターが指導ほどの権限はないとかダメダメづくしのオンパレードのように余計なことを散々説明すると逆に怒りは倍増するし、説明した後に、結果的に事業者に問い合わせることになったとしても、相談員としても嫌な気持ちになりますよね。期待を持たせたくないという気持ちが、思いとは逆に、ネガティブな結果になってしまうのです。

もちろん、このような相談事例の場合は、問い合わせることしかできないことは多いと思います。
しかし、それをそのまま伝えては、相手にネガティブな印象を与えてしまいます。
まさしく、相談員のネガティブな心が相談者にネガティブな行動を起こさせるというミラー効果が起こったわけですね。

そんなときに、「が」を使うのです。
「消費者センターとして、(消費者センターの名前で)事業者に申し入れることができますので、おまかせください」というニュアンスのポジティブな行動をとることを相手に示すのです。そうすると、相談者は、「消費者センターは頼りになるな、ありがとう、じゃあお願いします」と思うのです。

どちらに転んでも、事業者に問い合わせることになるのには違いがありません。
「ポジティブな行動」といっても、特別なことをする必要もないのです。
良い回答があればいいのですが、おそらく予想通りの回答になることが多いでしょう。

そして、事業者に問い合わせた結果を相談者に伝えることになるのですが、相談者にとっては納得いかないでしょう。この段階で、消費者センターでは期待にこたえるようなことができなかったと説明し、より適切な相談窓口を紹介するのです。
もちろん、怒りをぶつけられることになりますが、このときに必要な言い訳やダメダメづくしをすればいいのです。
積極的に事業者に問い合わせたという事実は残ります。問い合わせもしないのかとはなりません。やれることはやったのです。
やらずに怒られるのではなく、やれることはやって怒られるのなら、それはどうしようもないことです。

ちょっとした表現の違いがコミュニケーションスキルのレベルの差を生み出しますので、ぜひ参考にしてください。

ちなみに、他の相談機関を紹介するときも、「は」と「が」を意識してくださいね。
「専門機関の○○○、相談の対応をしてくれますので紹介します」