月刊 国民生活 2012年3月号

①特集 住宅を借りる-トラブル防止への新たな動き-
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)の解説」
・原状回復をめぐるガイドラインは98年3月に公表され、2004年2月に改定された。今回は、その最改訂(2011年8月)となる。
・原状回復の考え方は従前と同じであって、再改訂によっても変更はない。
・原状回復の定義を明確にした。
※住宅関連の相談はセンターによって、どこまで受けるのかまちまちだと思いますが、原状回復に関しては、このようなガイドラインがあり、必要以上の請求があっても支払う必要がないことは、助言しておく最低ラインですね。そこからセンターがあっせんに入るか、住宅専門の相談窓口を紹介するか、宅建業協会を紹介するか、法律相談を紹介するか、などの選択肢になると思います。
ガイドラインは国土交通省のHPで公表されているので参照してください。
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/
報道発表資料「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)の公表について(平成23年8月16日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000060.html
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/genzyokaifuku.htm
ここにガイドラインの本文や概要のリンクが張られています。

②チェックチェック! 苦情相談
「次々と高額の契約を結ばせるエステサロンと美容医療クリニック」
・共同クーポンサイトでエステの体験コース2000円を購入
・体験コースを受けた後に9000円3回券を勧められ購入
・3回分終了後、系列のエステの契約を勧誘されたが、50万円の個別クレジットが組めなかったため45万円をクレジットカードで決済。
・解約希望するも、再度契約書を書く必要があるといわれ30万円の契約書にサイン。
・不安になり、すべて解約したいというもキャンセルしているという言葉などを信用。
・審査が通らなかったクレジット会社から督促状が届き、契約したことになっていることに気づいた。
・自分でも、どの契約がどうなっているのか分からない。約束どおりすべての契約を解約して欲しい。
→50万、45万、30万の3契約があった。事業者は中途解約を主張したが、不実告知やクレジット審査の問題点を指摘して、3契約とも手数料なしで解約返金となった。
※この記事を読めば、なるほどそのとおりだな、と納得すると思います。しかし、それは、きれいに整理されてまとめられた記事だからこそ理解できるということに留意しておいてください。相談員として大事なことは、「消費者がどんな契約をしているのか分からない」という状態から、本人の話や契約書の確認などを経て、今回のように整理することです。整理すれば問題点はおのずと見えてきます。実際はこの整理する作業が大変なんですね。現場経験がとても重要で貴重です。エステだけでなく、出会い系や多重債務も同様で、相談者の主張を整理してあげることが大切であることを頭に入れておいてください。

③チェックチェック! 暮らし注意報
「悪質”出会い系サイト”における高額請求の被害」
「利益誘引型」の出会い系サイトについて
・消費者が出会い系サイトを利用する主な目的
(1)出会い型 (2)同情型 (3)利益誘引型
・「利益誘引型」トラブル発生の流れ
(1)誘導 (2)入り口は無料 (3)被害拡大
・問題点
(1)出会い系サイトであることを意識せず利用 (2)多数の人物や複数のサイトから連絡が入る (3)さまざまな理由で高額費用を支払わせる (4)解決が難しい
・消費者へのアドバイス
(1)「お金をあげる」等のメールには注意 (2)都度課金の場合は特に注意する (3)最寄の消費生活センターや弁護士会等に相談する
※芸能人のマネージャーが出てくる「同情型」や遺産をあげるなどの利益誘導型など、最新の出会い系サイトの手口が紹介されていますので、整理しておいてください。
(私あてにきた出会いケーメールも一部公開していますので参考にしてください)

④暮らしの判例
「携帯電話の未成年者契約につき、法廷代理人の同意に錯誤があったとして未成年者取消しを認めた事例」
・未成年者の携帯契約時に親権者が使いすぎにならないようになプランを契約しパスワードを知らせなければ上限額の変更はできないと説明され未成年者の名義で購入。未成年者が友人から聞いたパスワードを初期化する方法を使い勝手に上限を増額し高額請求となった。
→錯誤無効を認めつつも親権者の監護義務を尽くしたとはいえないとして過失相殺で3割の支払いを命じた。
※今回の解説は、民法のさまざまな重要用語がでてくるので、おもしろいです。勉強になります。
未成年者契約・取消、不当利得返還、錯誤無効、制限行為能力者、現存利益、などなど

⑤事例で学ぶインターネット取引
「ドロップシッピング型内職商法」
・ECネットワークの原田さんによる執筆4回の3回目です。
※ドロップシッピングの内職商法は今後減少すると思います。手口が、従前は実際にショップを作ってという、とりあえず正当なやり方でしたが、今回のように、サイトをきちんと作る気もない詐欺型に変化するかも知れませんね。おまけですが、ドロップシッピングというビジネスモデルは正当なモデルとして評価はされていますし、今後も正当な使い方がされれば使われるビジネスだと思います。

国民生活センターHP
月刊国民生活3月号
http://www.kokusen.go.jp/book/data/gko.html

ついに来月号で雑誌形式の出版の最終号になります。
来月号は
(特集) 消費者問題を振り返る-『国民生活』が伝えてきたもの-
となります。
記念に保存版で購入しておいてはどうでしょうか。

ジャドマニューズ 2012年1月号

「ジャドマニューズ」の最新号は、HPで電子書籍として閲覧できます。
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

「通販110番」の記事から一部紹介し、コメントします。

通販110番消費者相談編
「通販で返品する場合の注意点とは?」

事例1「試着しただけで返品を断られた」
・ネットショップ購入のズボンを試着したところイメージとは違うので返品希望したが、着用後返品不可といわれた
・「使用後、着用後は返品できない」と表示があったが試着程度なら返品できると思った。
→表示では使用済みが試着を含むか不明だったが、会社は返品=着用=使用と判断しているのでは。タグもそろっているのでもう一度お願いしてはどうか

事例2「会社の検品が厳しすぎる!」
・靴のカタログ通販で試し履きした上で合わない場合は返品してよいとのことだったので、返品したところ、商品に砂とペットの毛が付いているとして返品を断られた。
・猫を飼っているが、返品時に汚れを確認した。検品が厳しいのでは。
→購入時オペレーターに返品ことを相談していたので今回は特別に返品を受け付けるとのこと

※返品の相談は特に衣料品や靴などの通販やネット販売が伸びているので増加しています。問題は、まず、試着ができないこと。そして、消費者が返品を軽く考えていることです。店舗購入では通常返品できません。最近では靴のネット販売で返品可能なショップもできています。また、消費者も常識的な範囲での返品を考えて欲しいと思います。一旦返品したいと思うと、その思いを撤回させるのは容易ではありませんので、現場でも苦労します。

通販110番事業者相談編
賞味期限が短すぎる

事例1「配送期間を考慮して出荷すべきだ!」
・新聞広告で賞味期限が6ヶ月だったが、購入したものは残期間が3ヶ月と27日だった
・社内基準で2/3の4ヶ月で出荷している
・4ヶ月を3日切っているのが問題だとエスカレート
・開封し一部消費しているので返品を受けない方向

事例2「クッキーは製造当日に届けるべきだ!」
・賞味期限を製造日から30日としているが、届いた時点で20日しか残っていなかった。
・製造後最大でも7日以内のものを出荷しているが、当日に届けるべきだと納得しない

→残期間が極端に短くなければ常識に則って判断するのが妥当、事業者は賞味期限の根拠を明確にし、消費者は正しい知識を持つこと

※素直に疑問に思っている消費者であれば説明に納得するはずですが、何らかの意図を持っている消費者の場合は、それなりのモードで対応すべきですね。相手は何かと揚げ足を取りたがります。このあたりの対応が上手くできるかどうかが客相の質を表します。

新連載
メディアワクオン 情報リテラシーの備え
第1回「ステルスマーケティング」

・ステルスマーケティング(ステマ)とは、サクラを用いて口コミ風の宣伝をするなどの「隠れた販売促進」のことで昨年の夏あたりから注目されている
・消費者庁からインターネット取引上の景品表示に関する問題点が公表された
・食べログでの事件も発覚した
・日本人は口コミで評価することが好きである
・日本の文化にもなっている口コミにメスを入れるのはやさしくはない

※なかなか面白い連載が始まりました。2ページに渡って解説されており勉強になります。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

月刊 国民生活 2012年2月号

いよいよ雑誌形式での発行もあと3回になりました。
2月号は相談員試験の問題と解答、合格者の発表です。
それに関連しているのか、特集が「消費生活相談員」となっています。

①特集 消費生活相談員
「消費生活相談員の歴史」
※このような特集には欠かせない歴史的な流れを説明しています。消費者行政の流れや世相がよくわかる貴重な資料です。
「消費生活相談員の役割」
※兵庫県の行政職員から明治学院大学法学部准教授に転身した圓山先生の記事で今や消費者問題の専門家として書籍も出版しています。相談員の仕事が分かりやすくまとめられています。この記事をもとに相談対応マニュアルが作れそうです。私も参考にしたいと思います。
「消費生活相談員の声」
※現職の相談員6人の生の声が紹介されています。現場の実態を体感するにはとても参考になります。また、それぞれのセンターによる環境や方針の違いもよく分かります。

②チェックチェック! 苦情相談
「スーパーの仮設店舗でのモバイル通信契約」
※昔のヤフーのIP電話を思い出します。今こそ減ってますが、2年ほど前からどこででも見かける光景でしたね。
「説明不足」それにつきます。興味のない人・知識のない人を呼び止めて説明するのは無理です。
トラブル続出するのはあたりまえでしょう。それでも、商品特性を理解して購入すれば、有効活用できます。
解説では、仮設店舗が営業所に当たるのか、キャッチセールスに当たるのか、クーリングオフが可能なのかなど法律的な観点で書かれています。

「モニター応募者に当日手術をした美容クリニック」

※キャッチセールスのエステはひどいですね。昔からやっているのに今だに減らないです。今回の事例は犯罪的かもしれません。そして、このような悪質商法を根絶できるような制度がない・できない・やらないことは消費者行政の問題点ですね。国よ、もっと正論で取り組んでくれ!

③食品表示ミニ講座 「栄養についての表示」」
・栄養成分表示
・トランス脂肪酸の含有量表示の問題
・強調表示
※栄養成分表示は相談現場ではあまり使うことはないと思いますが、一般常識として知っておくべき食品表示の知識です。また、任意表示ということで始まりましたが、今やほとんどの食品に表示されています。強調表示の問題や将来的にはトランス脂肪酸の表示の問題まで含まれています。そして、消費者庁は表示を義務付ける方向で動いています。

④ホッと ティータイム 「がんばれ!新人相談員」
・新人相談員は何もかも不慣れです。しかし、経験に関係なく最高のパフォーマンスを求められるのが相談の現場です。がんばれ!

⑤平成22年度消費生活専門相談員資格認定試験 第1次試験 -問題と回答-
・あいかわらず、・・・・な問題です。問題数が250問→200問に減っています。
・国民生活センターのHPに受験者数や、合格率、都道府県別合格数が公表されていますが、受験者数・合格者数とも大幅減少です。
http://www.kokusen.go.jp/shikaku/pdf/11shiken_result.pdf

国民生活センターHP
月刊国民生活2月号
http://www.kokusen.go.jp/book/data/gko.html

先月号に↓のように書きました。残念ながら、ここまで突っ込んだことは書かれていませんでしたね。

次の2月号は毎年恒例の、相談員試験の問題と解答の公表と合格者の一覧が掲載されます。
そして、何よりも注目が、「消費生活相談員」が特集記事となります。雑誌形式の出版の終了を間近に控えているのと、相談員が注目されているので、いいタイミングですね。どんな記事か楽しみです。おそらく、相談員は消費者の被害回復や悪質業者の撲滅へ貢献してきたという内容になると思いますが、個人的には、「相談員の資質について、より高度な知識とコミュニケーション力が求められているが、資質の確保が難しく、問題となる相談員もいる」というようなところまで突っ込んでもらえたらと思っています。