国民生活研究 2010年9月号

今回も読むのがしんどかったです。法律の条文や解釈など集中して読んでも難しいです。
斜め読みしても頭に入りません。
ざっと読んだので、時間があればしっくり読みたいと思います。
9月号で取り上げるのは、前号の続きの「不招請勧誘規制」と今号から始まった「消費者契約法の裁判事例」の2つの論文です。

①【論文】不招請勧誘規制のあり方について(下)
津谷 裕貴(弁護士)

・前号に引き続き、「消費者の権利 新版」正田彬(岩波新書2010年2月19日)を引き合いに出して、「オプトイン」にすべきであると論じています。
・消費者契約法や金融商品取引法、金融商品販売法、保険業法など、不招請勧誘規制を必要とする法律について、どの条文がこれに当たるのかを解説しています。
・各地の自治体での消費生活条例で不招請勧誘がどこまで言及されてオプトインなのかオプトアウトなのか、具体的な自治体の条文を出して解説しています。基本的にはオプトアウトなんですが、オプトインに該当するような条例もあります。
・Do Not Call Registry(電話勧誘拒否登録制度)について紹介されています。
・「訪問販売お断りステッカー」を作成している自治体が増えています。このステッカーが「オプトアウト」の勧誘拒絶、特定商取引法3条の「契約を締結しない旨の意思表示」にあたるのかを解説しています。国の見解では「あたらない」とのことですが、消費者庁が設置されてから考え方が変わってくるのではないかと期待されているとのことです。筆者はこのステッカーはオプトインに該当すると主張しています。
・ざっくりとしか紹介できませんでしたが、2号に渡ったボリュームのある論文です。じっくり読み込めば法律解釈の勉強になると思います。

②【論文】消費者契約法4条の新たな展開(1) -「誤認類型」・「困惑類型」をめぐる議論と裁判例の動向-
宮下 修一(静岡大学大学院法務研究科准教授)

・消費者契約法が施行(2001年4月1日)されて10年が経過し、消費者契約法の適用についての裁判事例も多くなってきています。その解釈や判例ついて紹介しています。
・今号で紹介しているのは誤認です。
不実告知(4条1項1号)
断定的判断の提供(4条1項2号)
・条文解釈については「逐条解説 消費者契約法」を参照しています。
・逐条解説の見解、学説の展開、、裁判例の動向という流れで解説されており、肯定された例と否定された例について詳しく説明されています。
・裁判例では「中古車のメーター改ざん」や「パチンコの出玉」など具体的な事例があげられているのでわかりやすいと思います。
・最後のほうに多数の裁判例のダイジェスト版が掲載されています。
・「ながら読み」では理解できないと思いますので真剣に集中して読んでください。
・じっくり真剣に読めば意外と面白いです。

※条文の解釈や○×判例をたくさん読むことで、相談を受けたときに、どのような展開で事業者とやりあっていくかというのを学んでいけるように勉強したらいいと思います。正解というものは1つに限りません。自分自身が理解して取り組めるように心がけてください。

国民生活研究 第50巻第2号(2010年9月)
年4回発行 定価620円(税込み)

国民生活研究 2010年6月号

国民生活研究は国民生活センターが年に4回発行しており、消費者問題をはじめとする生活問題について掲載した調査・研究誌です。
論文ゆえにすぐに眠気に襲われ、読むのがつらいです。
2010年6月号には、「不招請勧誘」と「重要事項」についての論文がとても勉強になるので紹介します。
詳しくは本誌を読んでください。
といっても、一般的な本ではないので入手は難しいかもしれませんね。

①【論文】不招請勧誘規制のあり方について(上)
津谷 裕貴(弁護士)
②【研究ノート】不招請勧誘を規制する法令等の現状
福井 晶喜(独立行政法人国民生活センター)

・「不招請勧誘」
難しい言葉ですね。字を分解すると「招くことを請われるのを不とする勧誘」いうことですね。
さまざまに定義されているのですが、①の著者は「事業者が、消費者からの要請がないのに、一方的に、電話、訪問などによって、消費者に契約締結させようとする行為」と定義づけていますので、意味は理解できると思います。
・勧誘行為は、電話と訪問に限られており、電子メールやFAXが含まれていません。また、ダイレクトメールも対象外です。電子メールやFAXは、対象にしてもいいのではと思います。
・「オプトイン」と「オプトアウト」
optを辞書で引くと「選ぶ」とありました。イン(入ってくることを)選ぶ、アウト(出て行くことを選ぶ)と読むとわかるかもしれませんね。
「オプトイン」とは、消費者の事前の要請や承諾がなければ勧誘してはならない・・・原則、すべての事業者からの電話や訪問はダメ→不招請勧誘の禁止
「オプトアウト」とは、消費者の勧誘拒絶の意思表示があれば勧誘してはならない・・・個別に○○は勧誘してはダメと要請すれば、その事業者からの電話や訪問はダメ
ただし、どちらに該当するかは法律により、異なっており、たとえば金融商品取引法の店頭デルバディブ取引などはオプトイン(不招請勧誘は禁止)となっているが、特定商取引法ではオプトインではなくオプトアウトとなっています。
・「消費者の権利 新版」正田彬(岩波新書2010年2月19日)
が引用されており、とても面白い考え方です。興味がある人は読んでください。
不招請勧誘規制は、消費者の権利と事業者の営業の権利をの観点から調整が図られてきた経緯がある。
この本では、安心して生活する基礎は消費生活の権利の確立であって、事業者の営業自由は消費生活の権利を前提としたものだから、消費者の権利と事業者の営業の権利を調整するという発想であってはいけない、と書かれているという。
・「訪問販売お断り」ステッカーについては次号で解説されます。

③【研究ノート】消費者契約法4条の「重要事項」の意味-最高裁判所平成22年3月30日判決を受けて-
宮下 修一(静岡大学大学院法務研究科准教授)
「学納金返還訴訟」と「
・4/7までに補欠合格が予定されている大学に4/5に入学自体をした場合に授業料等の学生納付金は一切返還しないとした学納金返還訴訟で、当該特約は有効との判決です。
従来の3月末までに入学辞退した場合は授業料については返還すべきという判例は踏襲するが、4月以降はダメだという解釈のようです。次号に詳細に解説されるようです。
・将来における金の価格が「重要事項」には当たらないとの判断です。
重要事項を「限定的」に解釈することについて意見が書かれています。

国民生活研究 第50巻第1号(2010年6月)
年4回発行 定価620円(税込み)