留守電メッセージ

継続案件で相談者に電話したところ、留守電になっていた場合に、どう対応したらよいでしょうか。

まず、留守電になっているとは思ってなくて、あたふたしてしまう、というパターンもよくありますね。
そのまま切ってしまうこともありますが、着信履歴に残っているときなど苦情になることもありますので気をつけてください。

一番気をつけてほしいのが、事業者との交渉結果を連絡したかった場合に、留守電だったら、どんなメッセージを残すか。
簡単なことですが、確認しておきたいと思います。
メッセージの内容によっては、次にかかってくる電話で怒りをぶつけられるかもしれません。

伝言できる内容は限られています。
その短い文章の中に、伝えたいことを、きちんと伝えることができるでしょうか。
ほとんどできません。

ポイントは、相談者にとって、良い結果のときは、その内容を留守電に残してもOKです。
喜んで電話がかかってくるでしょう。電話がかかってきてもお互い良好な関係で話ができて、あっせん解決します。

一方、良くない結果のときは、その内容を留守電に決して残さないようにしてください。
すなわち、「事業者が相談者の申し出を拒否したり、消費者センターの話を聞いてくれなかったり、賠償額を減額してきたり」、相談者に電話で直接伝えたら、必ず怒って、相談員に怒りをぶつけて、交渉継続するような場合は、その内容を決して留守電に入れてはいけません。

センターと事業者の複雑なやり取りのあとに出てきた結果ですが、その経緯は相談員しか分かっていませんので、相談者に結果だけを伝えると経緯が伝わりません。思わぬ反論をされてしまいます。後から、「実はこういう経緯があって、そういう回答になりました」、と説明して何とか理解してもらっても、お互い気まずい空気は残ります。それなら最初から伝えなければ良かったのです。留守電の否定的な内容を聞いてしまうと、いろいろ考えてしまい、だんだん怒りが増してきます。限られた留守電のメッセージですので中途半端にしか伝わりません。

留守電に入れる内容は、
「○○消費者センターの相談員の○○です。先日ご相談いただいたことで、お伝えしたいことがありますので、お手数ですがお電話ください(または改めて電話します)」
これでOKです。
次の電話で直接、事業者との交渉の経緯や良い結果が出なかった報告と今後どうしていくかを話し合ってください。

ちょっとした心がけで、相談者との信頼関係を崩すことを避けることができると思います。

(平成23年6月6日 初稿)
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日本人の気質

今回の大震災の日本人の整然とした被災者の対応について海外から高く評価を受けています。
外国人にはまねできないといわれています。
文化の違いが根底にあるということもいわれています。
そうだからこそ、日本は外国人をなかなか受け入れることができないのかもしれませんね。
その一つのキーワードが「我慢」です。
非常事態にはみんな我慢して協力し合うという精神です。

この「我慢」というキーワードについて、消費者センター的に考えたいと思います。

消費者センターに相談に来た消費者が興奮して大きな声を出し被害を矢継ぎ早に訴えることがあります。
まるで、消費者センターに苦情をいっているようにも感じるときがあります。
また、メーカーへの苦情の申し出も、怒り心頭で電話をかけています。
街中でも、いきなり大声を叫んでいる場面に出くわすこともあります。

これらは、日本人の「我慢強さ」からきているのではないかと思っています。

日本人は何か嫌なことがあっても我慢します。
我慢して我慢して、我慢の限界を超えてしまったら、いきなり怒りの頂点に達します。
しかし、言われた側にとっては、いきなり怒りモードでこられても、何でこんなに起こっているのか、クレーマーだ、と引いてしまいます。

日本人のリスクコミュニケーションと同じですね。
(参考:リスクコミュニケーション https://soudanskill.com/20110405/193.html)

つまり、「怒る」か「怒らない」かの2者択一なんです。
「少しだけ怒る」「ほどほどに怒る」「結構怒る」という中間点がないのです。
「100%怒る」か「0%全く怒らない」かとなり、我慢している間は「0%全く怒らない」にはいってしまうのです。

電車の中でもよくありますよ。
ヘッドホンから音が漏れているときに、「音が漏れているので、少しボリュームを下げてください」といえば、相手も「すいません」で終わると思うのですが、残念ながら、日本人は注意せずに我慢します。
我慢して、我慢して、我慢の限界を超えてしまって、発する第一声が、「うるさい!迷惑だ!」。
言われたほうも、いきなりで戸惑ったり、逆切れしたり、周りの人も引いてしまったり、というシーンがうまれます。

消費者センターにきた相談者も、我慢に我慢を重ねて、限界を超えて、苦情を申し出ています。
100%の状態で、訴えます。特別なこととして考えるのではなく、普通のことだと考えてください。
相談者の心理状態をよく理解してあげて対応します。
まず、怒りを吐き出させてあげる。そして、その中から、相談者の相談したい内容を理解してあげる。それを受け止めてあげる。
そこからスタートします。
相談内容は、実は、「なんでもないこと」が多かったりします。
お互いが、ほどほどの状態であれば十分トラブルにはならない事例が多いです。
したがって、お互いの感情を相談員がすりあわせれば簡単に解決する場合もあります。
なかには話を聴いてもらったというだけで、気持ちがスッキリして、解決する場合も少なくありません。
バランス理論を思い出してください。

逆に、怒りを吐き出しているときに、それを止めたり、言い返したりすると、相談員への怒りに変わってくることもあります。
気持ちのすれ違いから100%状態になっているだけなんです。
相談員も最初は嫌でしょうが、話を聴いているうちに落ち着いてきます。
日本人のこうした感情を理解しておくことを心がけてください。

(平成23年5月30日 初稿)
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リスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションの考え方は、食品の安全・安心が社会問題となった頃に注目されました。
厚生労働省では、新しい政策をする場合に必ずリスコミ(リスクコミュニケーションのこと)を全国各地で開催するようになり、ホームページでも告知され、一般の消費者も参加できます。今では、農林水産省など他の省庁でも実施されています。
厚生労働省のホームページに詳しく解説されています。

厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/index.html
食品の安全に関するリスクコミュニケーション
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/riskcom/
1 リスクコミュニケーションとは
2 意見交換会
厚生労働省における意見交換会の開催状況
などを参照してください。

簡単にいうと、絶対安全というものは存在しない。必ず危害(リスク)が存在する。そのリスクが、どの程度だったら受け入れることができるのか、ということです。

日本人は、安全か、安全でないか、いわゆる、「0」か「100」かという考え方を根強く持っています。
したがって、農薬が少し基準を上回っただけで生命に危害が及ぶと過剰反応したりします。
科学的にあらわされるのは「安全」であり、「安心」は気持ちの問題です。
「安全」は固定されているのですが、「安心」は人それぞれであるのです。
しかし、「安全」と「安心」を混同してしまっています。
そこで、国や事業者や消費者などの利害関係者が話し合うことによって、「安全」と「安心」をお互いに共有する場をもとうというのが「リスクコミュニケーション」です。
残念ながら、日本では十分に浸透していません。

今、まさに、地震で津波や原発など、日本人にリスクコミュニケーションが試されているのです。
今回の地震の規模と一連の災害を想定すべきものと考えるのか、想定を超えた想定外のこととして考えるのかで大きな違いがあります。
想定すべきものとしたら、それに見合う金銭的・精神的な負担をしてきたのか。
想定外であれば、それを受け止め前向きにがんばる。
批判する根拠(権利)と今までの行動(義務)との整合性があっているにか。
消費者は正しく受け止めることができるでしょうか。

たとえば
①20mを超える津波に耐えうる防波堤をつくることが必要か?
→多額の費用をかけて100年に一度の備えをするのか、大増税になっても国民はその費用を負担する覚悟があるのか
②原発は危険だからやめるべきか?
→そうなれば計画停電が毎日数時間実施されるような電力不足に対して、電気を使わない暮らし、新エネルギーへの転換の費用負担、高額な電気料金が必要な現実をどう受け止めるのか
③低レベルに汚染された水を緊急に海に流すことと、流さずに高レベルの水でもっと汚染され事態が悪化するかもしれないことのどちらを選ぶのか
④汚染地域の食品や水を消費者が避けるのか
⑤ガソリン車の脱却をはかるのか
などなど

これらは、国に強制されるものではなく、国民が選択するものです。
税金を払っているのは国民であり、享受を受けているのも国民です。国は国民で成り立っています。
私たちが選択するのです。権利と義務のようなものです。

今まさに、真剣に、一人一人が今後の日本のことを考えなければなりません。
政治に無関心な国民は、もっともっと政治に関心を持たなければなりません。
日本の国民、消費者の意識が変わることを期待しています。

長々と書きましたが、実は私が言いたいのは、相談現場も、まさしく「リスクコミュニケーション」の世界なのです。
消費者が100%勝つ、事業者が100%勝つ、というのもあるでしょうけど、基本的には、どこかで折り合いをつけなければなりません。その過程が、「あっせん」なのです。
事業者が100%悪いからといって、すべてそのとおり進むとは限らないのです。
相談員として正義を貫き100%を求めるは基本のスタート位置ではありますが、現実にあわせて、折り合いをつけることが重要です。
まさしく、コミュニケーションです。
どのタイミングで。
どの程度の割合で。
一方的なものはコミュニケーションではありません。

日本人はコミュニケーションが苦手です。
しかし、相談員はしっかりコミュニケーションしなければなりません。
相談員に十分なコミュニケーション能力が備わっているのでしょうか。
知識習得にかたよっているスキルアップではなかなか難しいのではないでしょうか。
私は、このコミュニケーションについて、みなさんに考えてもらいたいのです。
今後、コミュニケーション能力を身につけるヒントやポイントをこの講座で示すことができたらと思います。

(平成23年4月5日 初稿)
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