情報は待っててもやってこない

フェイスブックのお友達が、行政の発信している情報について、『必要な人に必要な情報が届いてない気がする。ってか僕が知らなさすぎるだけ?』と投稿されていました。その投稿は、すごい本質を突いており、そして、多くの人が重要な視点に気付いていないのです。
行政にいた立場も考えて、コメントしたら長文になってしまいました。

フェイスブックの投稿は埋もれてしまうので、こちらにアーカイブ(保存)しておこうと思い、編集しました。

目次

  • 行政の情報の「出し手の視点」と「受け手の視点」
  • 消費者問題で考えてみると
  • 消費者は自ら情報をとりに行く必要がある時代に
  • 制度を変えようというパワーが不足
  • 私の事業としての取り組み

行政の情報の「出し手の視点」と「受け手の視点」

テレビでも新聞でも何かあれば行政の情報の伝え方に問題があると批判しがちです。
そこに大きな落とし穴があります。
すなわち、情報の出し手の視点ばかり考えて、情報の受け手の視点が抜けているのです。

行政は多くの施策をしていて、多くの情報を、ぎゅうぎゅうづめにして発信しています。必要な情報は、方法はいまいちだとしても、ほぼ発信しているはずなんです。広報誌は全戸配布されています。

後は、受け手が読むか読まないかです。読む人は読むし、読まない人は読まないです。で、あまり読まれていません。そして、読まなかった人は、知らなかったことを情報の出し手の責任にするのです。

もし、必要な人にセンシティブな個人情報をタグ付けして、それぞれに人海戦術で伝えようとしたら、お金も人も無限に必要になり、きりがなくなってしまいます。お金も人もかけずに伝えたい人に情報を伝えることができる方法があればすごいことなんですけどね(その可能性にあるのがSNS)。

消費者問題で考えてみると

たとえば、悪質商法の被害や詐欺の被害は、あれだけニュースになっているのに、一向に被害が減らないというのは、その情報を「受け取り拒否」しているようなものです。もしくは、受け取ったとしても、「自分とは関係のないこと」として、受け取らないかもしれません。伝えたくても伝えることができない、そして結果として伝わらないというジレンマがあります。
また、高齢者などは「受け取る」ような環境自体がなくなってきているのかもしれません。

行政が主催する様々な講座でも、来て欲しい人には、「来て」と発信しても来てくれず、結局、動員して席を埋めてしまうことは少なくないです。成果ではなく実施することに意義がある、に変わってくるのです。主催する立場になれば困難さが分かると思います。

これまでの消費者保護基本法では「消費者は行政から保護される立場」として受動的に捉えられてきて、行政も「保護」する政策で消費者を守ってきました。
しかし、時代の変化とともに消費者を取り巻く環境が大きく変化し、21世紀にふさわしい消費者施策として、「消費者は自立する立場に」として、2004年に消費者保護基本法が根本的に見直され、法律名から「保護」という文言がなくなり、「消費者の権利の尊重」に加えて「消費者の自立の支援」を柱とする「消費者基本法」に改正されました。

消費者は自ら情報をとりに行く必要がある時代に

消費者は能動的に情報が来るのを待つだけでなく、自分から積極的に情報をとりに行く必要があるのです。昔のように情報の量が少ない時代だったら、情報への気付きも多いかもしれませんが、今は情報洪水の時代です。自分に発信された情報の中から、必要な情報を取りに行き、取捨選択しなければなりません。情報の出し手の責任にするのは限界があるのです。しかし、この作業は大変手間がかかります。

役所は基本的には決められたルール内でしか仕事ができません。そのルールがおかしいと思っていても、ルールどおりにしなければいけません。外国人登録の指紋押捺制度を想像していただいたらいいと思います。今は廃止されましたが、現場でおかしいと思って、その制度を勝手に運用しなくすれば怒られてしまうので、ルールどおりに機械的にすることになります。

制度を変えようというパワーが不足

行政や国を動かし、法律や制度を変えようと思えば、その必要性を訴える必要があります。その力を持つのは、消費者であり市民であり国民です。それぞれが声を上げなければ、必要性があるとは判断されず、実現しません。行政職員が声を上げても、「それって、市民が本当に必要としているの?多くの声が上がっているの?」となり、実際は声を上げているのはごく少数であったり、職員自身の思い入れだったりしますので、結局、直接、国民が声をあげていかなければ簡単には動きません。日本では政治的無関心であったり、他人事で済ます人がまだまだ多く、そのような風土にはなっていません。

行政では多くの社会福祉支援制度がありますが、多すぎて自分が対象になるかどうかは自分自身が情報を取りに行かなければわかりません。情報を積極的に取りに行くかどうかで、金銭的な恩恵を受けれるかどうかにも発展します。

情報を使いこなせる者と使いこなせない者で収入格差が生まれるという「デジタルデバイド」の概念は10年以上前には誕生していました。

本当に情報を必要としている弱者をどうフォローしていくかが大きな課題です。高齢者を地域で見守りするという試みも行われています。人手やお金を最小限にして、情報が必要な人に伝えるにはどうすればいいのかということをみなさまでも考えてみて欲しいと思います。

私の事業としての取り組み

私が取り組んでいる小規模事業者の消費者法の法務支援も、「大切なこと」であり、多くの事業者に伝えたいと思っても、「受け取り拒否」されては伝えることができません。10/3のJIMDO関西セミナーに来られた方は、積極的に情報を取りに行こうという姿勢の方ばかりなので、このセミナーの開催が成立したのです。そして、その情報を得た事業者とそうでない事業者には必ず格差が生まれます。私は多くの小規模事業者に「大切なこと」を伝えたいので、いかにして、情報を受け取ってもらい関心を持ってもらうかという課題に取り組んでいます。

※10/9のfacebookの投稿を編集