「食べログ」裁判で判決

北海道の判決が全国版のニュースになるほど注目すべき裁判だったんですね。

口コミサイトについて何らかの規制等があるのか考えると、相談員であれば「ステルスマーケティング」という言葉でご存知だと思います。
3年前に食べログの「やらせ投稿」の事件が社会問題となり、消費者庁から通知が出ましたね。
今回はやらせ投稿ではなく、一般の消費者がネガティブな情報をコメントしたことに対してのものです。
後述しますが、景品表示法ではなく、民法の名誉既存や営業妨害になる可能性が検討されるのではと思います。

NHK北海道 NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20140904/4242241.html
「食べログ」裁判で判決
09月04日 19時00分

「食べログ」裁判で判決
飲食店の検索サイト「食べログ」に掲載された利用者の「口コミ」をめぐり、道内で飲食店を経営する会社が否定的な書き込みの削除などを求めた裁判で、札幌地方裁判所は「望まない情報であっても掲載の拒絶は容認できない」などとして原告の訴えを退けました。
飲食店の検索サイト「食べログ」に掲載された利用者の「口コミ」をめぐっては、道内で飲食店を経営する会社が「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」といった否定的な書き込みで客が減り、営業上の利益が侵害されたなどとして、サイトを運営する東京のインターネット関連会社「カカクコム」に情報の削除などを求めていました。
4日の判決で、札幌地方裁判所の長谷川恭弘裁判長は「原告は会社であり、広く一般人を対象に飲食店を営業しているのだから個人のように自己に関する情報をコントロールする権利はない」と指摘しました。
そのうえで、「望まない情報だからといって掲載の拒絶を認めれば、他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されることになり、到底容認できない」と述べて、原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決について、原告の弁護士は、「大企業の論理に従って、小規模な飲食店の声に耳を傾けない不当な判決だ」として控訴する方針を明らかにしました。

口コミサイトにネガティブな意見を書いたら違法になるのか?

まず最初に消費者庁の通知を復習します。
インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
(平成23年10月28日 消費者庁)一部改定 平成24年5月9日 消費者庁
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120509premiums_1.pdf

2 口コミサイト
(2)景品表示法上の問題点
口コミサイトに掲載された口コミ情報は、インターネット上のサービスが一般に普及するに従い、消費者が商品・サービスを選択する際に参考とする情報として影響力を増してきていると考えられる。
口コミサイトに掲載される情報は、一般的には、口コミの対象となる商品・サービスを現に購入したり利用したりしている消費者や、当該商品・サービスの購入・利用を検討している消費者によって書き込まれていると考えられる。これを前提とすれば、消費者は口コミ情報の対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、消費者による口コミ情報は景品表示法で定義される「表示」には該当せず、したがって、景品表示法上の問題が生じることはない。
ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

要するに、口コミ情報を事業者自らもしくは第三者に依頼して掲載し、その内容が実際よりも優良・有利だと誤認させるものは違法ということになります。
したがって、一般の消費者による有料・有利誤認の口コミ情報は景品表示法に該当しないので、やはり、民法的な名誉毀損や営業妨害になるのでしょうね。

では、今回の書き込みは名誉毀損に当たるのか?
ニュースを読むと、「望まない情報だからといって掲載の拒絶を認めれば、他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されることになり、到底容認できない」ということになっているので、内容の是非(名誉毀損かどうか)というよりも行為の話(個人の自由発言)になっている気がします。もしかすると判決文を読むと名誉既存にまで言及しているかもしれませんが。

クレームは「宝」という視点

「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」というのは中傷でもなく、単なる事実です。消費者センターで相談を受ける場合に、相談内容を事実と感情に分けて考えます。事実とは誰から見ても変わることのないものであり、「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」というのは事実になります。たとえば、「料理がまずかった」というのであれば、当事者にとっては事実かもしれませんが、主観的なものであり、その書き方によっては微妙な場合もあります(それでもアウトとなる可能性は少ないようですね)。国内産というが中国産に違いないとコメントした場合は、事実を確認していない感情的な推測ということなのでアウトの可能性が高いです。
読売新聞には「商売向けの味ではない」という口コミがあったと書かれていましたが、結局は、判決の趣旨どおりに考えられたということですね。
裁判を起こしたときの記事が見つかりましたので参考に。

J-CASTニュース
食べログ「まずい」クチコミに店激怒 「客減った!弁償しろ」裁判はどうなる
2013/5/ 9 19:52
http://www.j-cast.com/2013/05/09174764.html?p=all

お店の対応として

まず、店舗は食事の提供に時間がかかったという事実関係を確認し、事実なら、明らかにミスと思われます。そのミスに対して、その場でリカバリーできなかったこともミスです。
したがって、このミスに対して謝罪することが第一です。そして、再発防止策を説明して、今後の改善策とすることです。
また、日本人はその場で苦情を言わない性格があるので、料理が出される時間が遅くなりそうなら、了解を求め、また、料理が遅いなら消費者の側から申し出てもらうなど、一般的なクレーム対策をしていれば十分対応できるのではないかと思います。そんなに難しい話ではないと思うのです。
特に、今はネットで情報が拡散するので、対応がお粗末であれば、ダメージを受けるし、迅速な対応評価されるし、天国と時刻の時代となっています。そうして、基本的なクレーム対応はぜひとも学んでほしいと思います。

消費者センターでの対応

これまで何度も説明してきましたが、相談者や事業者の主張が、事実であるのか、感情であるのか、をまず分けて考える必要があります。そうすれば、今回の事件のように、争点は何かがわかってくると思います。したがって、それにあわせた「あっせん」を提案することが重要です。「事業者の謝罪と改善策」と「消費者の理解」を結び付けてあげるのが消費者のセンターの役割だと思います。

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