相談員の能力の査定
前回の続きです
新人相談員、ベテラン相談員、転職組相談員など相談員になった経緯は様々です。そして、相談員は一定のカリキュラムで育成された職種ではないので、その能力も千差万別です。
この専門化育成カリキュラムがないところが、相談員の資質の向上が果たせない要因になっているのではないかと思います。
それはさておき、相談員の能力を測る簡単な考え方を紹介します。
ベテラン相談員が必ずしも能力の高い相談員とは限らないことがわかると思います。
相談員資格の見直しの検討会でも相談員の能力について言及しています。
それは、相談員の能力は、「知識」と「技能」が重要であるということです。
従来の「知識」偏重から「技能」の向上に目が向いたわけです。
技能の大きな柱は「コミュニケーション能力」です。
今回、私は相談員の能力の目安を「知識」と「伝える能力」で説明したいと思います。
「知識」と「伝える能力」は掛け算で考えます。
たとえば、Aさんが、ある分野の知識レベルが100だったとします。
しかし、Bさんは80の知識レベルしかありません。
すると知識ではBさんよりAさんのほうが優れているとなります。
では、相談者にとってはBさんよりAさんのほうが対応満足度の高い信頼できる相談員になるのでしょうか。
そうとは限らないです。
これが対人能力の必要な仕事の妙技であります。
Aさんは100の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は70%でした。
Bさんは80の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は90%でした。
するとAさんが相談者に伝えることができたのは100×70%の70の知識で、Bさんは80×90%の72の知識です。したがって、BさんのほうがAさんよりも多くの知識を相談者に伝えることができました。その結果、AさんよりもBさんのほうが相談者にとって満足度の高い相談員ということになります。
最終的に、2人の能力を査定したところ、AさんよりもBさんのほうが能力は高いということです。
(72と70はわずかな差ですが、一種のたとえ話と捉えてください)
同じパターンで、Aさんのある分野の知識レベルが160だったとします。すると、Bさんの知識レベル80の2倍となり、表面的にはAさんのほうが2倍の能力があるように見えます。
しかし、実際にその相談で必要な知識は100でした。残りの60はその相談では必要のない知識でした。しかし、Aさんはその60の知識も伝えようとしました。すると、相談者はどうなるでしょうか。
長い時間をかけて必要のないことまで説明されて、どうすればよいか分からなくなります。
単純に伝える力を%として考えましたが、これを「人当たり」と置き換えてもいいと思います。
私の言いたいことが伝わったでしょうか?
相談員に必要な能力は「コミュニケーション能力」です。
知識は足し算で増やすことができます。これは、経験年数にもある程度比例します。誰もが努力すれば知識レベルを上げることは可能です。知識レベルが高ければ能力も高いと錯覚しがちです。ただし、ある一定レベル以上の知識は当然ながら必要です。
一方、コミュニケーション能力というのはその人の人格そのものです。加減乗除で図れるものではありません。性格的なものですので、簡単には変えることはできません。
私は、「相談員の能力=コミュニケーション能力」だと思っています。
相談現場で「話を聞いてあげるだけで解決する」「一般常識で十分対応できる」という知識レベルとは関係のない相談も少なくないのではないでしょうか。
このコミュニケーション能力は人付き合いをすれば分かってきますので、比較的短期間で評価することができます。
いくら大学教授や弁護士並みの知識があっても、コミュニケーション能力のない相談員は必要ありません。
あなたは、どのタイプですか?
あなたの職場のほかの相談員はどうですか?
相談員の資質の向上のための研修がたくさん開催されていますが、コミュニケーション能力が向上していますか?
コミュニケーション能力の向上を真に願っている相談員は少なくないと思います。