怒鳴られることが仕事(朝日新聞 2012年11月7日)

朝日新聞2012年11月7日朝刊の「ルポルタージュ現在」に掲載された記事を紹介します。
朝日新聞のHPでは冒頭の一部を閲覧できます(全文閲覧には有料契約が必要です)。

もしよかったら、職場やご自宅、図書館で閲覧してください。

朝日新聞デジタル 記事 2012年11月7日03時00分
http://www.asahi.com/national/intro/TKY201211060698.html

きょうも電話で怒鳴られる〈ルポルタージュ現在〉

「ぶっ殺す」
電話を取ると同時に、太い声が耳に突き刺さる。1分ほど待たせた相手の怒りは初めから全開だ。

沖縄県浦添市にあるヤマダ電機のコールセンター。仲宗根彰平さん(20)はひたすら謝り続けた。通話が長引けば、待たせる電話がまた増える。悪循環だ。

「僕が怒られてるわけじゃ…

写真:絶え間なく電話を受け続けるオペレーター。女性が6~7割を占める=沖縄県浦添市、矢木隆晴撮影

冒頭の最後は

「僕が怒られてるわけじゃない。たまたまぶつけられてるだけ。」働き始めて1年半。こんな電話を受けるたび、自分に言い聞かせている。

と、続きます。

記事にあるメーカーのコールセンターほど激しくはないですが、消費者センターでもよくある電話ですね。
メーカーのコールセンターが直接自社の苦情を受けるのに対して消費者センターが少し異なるのは、消費者のメーカーへの不満を消費者センター・相談員にぶつけてくることです。
誰もが経験があることだと思います。
いきなり、マシンガンのように不満をぶちまけてくることに対して、「メーカーに申し出てください」「消費者やセンターに言われても」とまともに答えても意味がなさないことがあります。

こんな場合は、相談者の事業者への怒りを放出させるまで、受け入れてあげることが第一歩になります。
そうすることで、落ち着いて、現実のトラブルの対応についてお互いに話を進めることができます。
ただ、怒りを一方的に聞かされて、うなずいて、というのは、つらいですね。心が折れてきます。

本当は最初から冷静になってほしいのですが、すべてがそうとは限りません。
どちらかというと、難対応事例になります。
これを本当の難対応事例にしないためにも、相談員の最初の対応が重要となります。
もし、相手の感情を放出しきれずに、相談員が口を挟むと、消化しきれていない怒りが、相談員に向けられます。
そして、事業者へ向けられた怒りと同じ怒りが相談員に向けられてきます(バランス理論)。
怒りを放出しきると、さっきまでの怒りは何だったのかというぐらい、すっきり冷静になることもあります。
相談員のコミュニケーション能力次第です。

消費者側の問題なので根本的な対策はありませんが、消費者センター側の対応として「相談者の怒りのレベルを上げるような初期対応にならないように」との原則を心がけてください。現実には、こちら側もカッとなって対応してしまうこともあり、なかなか難しいんですけどね。

この記事の中ほどには

一緒に入った13人のうち残っているのは2人だけ。みんな「体調不良」などを理由に辞めていった。
「一回折れてしまうと、立ち直れない人が多いですね」。
最初の1ヶ月で3分の1が辞めるという。

そして、最後に

相手が納得するまで切らない。それがコールセンターのルールだ。トイレの壁には誰かが拳で開けた穴が二つ残っている。

と締めくくられています。

相談現場を知っていれば共感できる記事です。
特に最近は対応に苦慮する消費者が増えてきたので、気持ちはよく分かります。
最近は相談員のメンタルヘルスに関する研修会も開催されています。

今回の記事は「事業者コールセンターオペレーター」と「消費者」との関係ですが、私たちは「消費者センター相談員」と「消費者]との関係となります。そして、忘れてはならないのは、「事業者」と「消費者センター]という、対消費者的には同じ立場になるものの、トライアングルの新しい関係があります。そこでも、同じように苦慮することもたびたびですね。

この記事にはコメントを記入することができます。コメントを記入するには記事のタイトルかコメントリンクをクリックして単独で記事を表示してください。

怒鳴られることが仕事(朝日新聞 2012年11月7日)” に対して2件のコメントがあります。

  1. かんりにん より:

    相談者や事業者との対応の中で大きなストレスを受けることは仕方がない職業ですが、せめて、まわりの相談員や行政職員からストレスを受けることのないような職場環境であることを望みたいですね。

    クレーマー的な対人関係でストレスを受けた場合は、思いつめず、相手は病気であるからかわいそう、などの理由でスルーできるような切り替え力を持ちたいです。
    (参考)カール・ロジャースの2:7:1の法則 2011年10月13日(木)

  2. デビ子 より:

     目を閉じて上を向く女性の写真に共感を覚えました。電話を切った後の何とも言えない疲労感。わかってくれる人がいる、感謝してくれた人がいたということが助けになって、また受話器をとれるのだと思います。家族のために働かなければという思いが、職場へと足を運ばせるのだと思います。
     でも、上司の「こんな職場はいらないと思っている。」という言葉にはため息だけではぬぐえない重いものがおなかに住み着いたような気持になりました。職場の雰囲気が悪く、眠れないこともしばしばです。『メンタルヘルス』、消費生活相談員をしていると確かにサポートが必要な気がしています。

コメントは受け付けていません。