「学校にエアコン」住民投票

2月15日に埼玉県所沢市で実施された住民投票ですが、読売新聞では「賛成多数」と報道されていました。

これって、本当に賛成多数なんだろうか?と疑問が。

対象人数278248人、投票率31.54%、賛成56921票、反対30047票

ここでは、エアコンの是非については別の話しとしておいておき、このような賛成反対を決めるときの行動や気持ちについてコメントしたいと思います。

「賛成ありき」の住民投票

私が思うには、この住民投票は、賛成反対を決めるというよりも、反対を決めるというよりも、賛成を決める住民投票の色合いが濃いと思います。

「賛成ありき」の投票ということです。

したがって、賛成の人は投票するでしょうが、反対の人やどちらでもいい、興味がない人などは投票に行かない可能性が高いです。

すると、賛成5万反対3万で賛成多数と考えてもいいのでしょうか。

どちらかというと、28万人のうち、賛成5万と読み取れます。すると、そんなに賛成多数ではないのかなと。

個人的に特筆するのは、反対票が3万票もあったということです。賛成ありきの投票にわざわざ反対票を投じる人がこんなにいることは、潜在的に反対の人が多いのではないかと思います。賛成の人は投票に行くでしょうから、潜在的に賛成の人はそんなにいないのではないかと思います。

住民投票のルールにあわせたら反対で決定。
逆の動きを市がすると、当然民主主義ではおかしいとなるでしょう。
だから、簡単に住民投票してしまうと、後が苦しいのですね。

このような結果になったことを、5万と3万で賛成多数と決めて、民意とするのは民主主義では少し無理な話だと思います。あくまでも結果はこうだったのですから。それを冷静に評価することが必要ですね。

もちろん、エアコン設置は切羽詰った教育の問題ですから今後も議論は継続していくことになると思います。

裁判も同じ性質

よく似ている現象に、裁判があります。訴えた人は勝訴で当然と思ってるのでしょうが、敗訴したときには裁判制度が悪いなどと主張します。これも、「勝訴ありき」の裁判で、勝訴でなければおかしいというバイアスがかかっていると思います。あれだけ、時間もお金も人もかけて裁判したのですから、裁判を批判するのはどうかなと思ったりします。

どちらも、本人、採決、現象の3者をバランス理論で説明すれば、気持ちがよく分かります。敗訴でやるせない気持ちを、どうするのかというコミュニケーション的な考え方になりますね。

日経電子版より 「学校にエアコン」住民投票、「賛成」実施目安に届かず(2015/2/16 1:31 )

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H38_V10C15A2CR8000/

「学校にエアコン」住民投票、「賛成」実施目安に届かず
2015/2/16 1:31
埼玉県所沢市で15日、市立小中学校へのエアコン設置の是非を問う異例の住民投票が実施、即日開票され、賛成5万6921票、反対3万47票で、 賛成が上回った。しかし、投票率は31.54%にとどまり、賛成票はエアコン設置実現の目安だった投票資格者総数の3分の1に届かなかった。
藤本正人市長(53)は「これから内容を分析するが、高くはない投票率が残念だ」とのコメントを出した。
投票結果に法的拘束力はないが、藤本市長は住民投票前に「賛否いずれかが投票資格者総数の3分の1以上に達した場合は結果に従う」と表明していた。保護者らは「市長はどのような結果でも重く受け止める必要がある」と話しており、市長の判断が注目される。
市は2006年、付近にある入間基地を離着陸する航空自衛隊機の騒音対策として、防衛省の補助を受けて全校に冷房を設置する方針を決めた。
しかし、1校に設置された後の11年に初当選した藤本市長が、「快適さを最優先した生活を見直すべきだ」「東日本大震災を機に自然と調和した生き方への転換を」と唱え、12年に方針を撤回した。
所沢市立小中学校のうち29校は、騒音を防ぐため密閉性の高い窓などが備えられている。基地から約2キロの狭山ケ丘中の生徒を中心に「夏は扇風機が無意味なほどの蒸し暑さ。窓を開けると10分おきに騒音があり、先生の声が聞き取りづらい」などの声が相次いだ。
保護者らは「(エアコン設置は)快適さのためではなく騒音対策。学習権の侵害だ」と訴え、署名を集めて住民投票を実現させた。
投票資格者総数は27万8248人だった。
埼玉大の斎藤友之教授(行政学)は「住民投票は市町村合併や原発建設など大きな議題が多く、地元に密着した問題は珍しいが、教育は地域社会全体に関わる大事な争点だ」と指摘している。〔共同〕